子供の顎が小さいとどのようなことが起きるでしょうか。今日は、子どものあごが小さいことが原因で起こるトラブルについて詳しくご紹介いたします。
子供の顎が小さいと良くないの?
顎が小さいと小顔だからうらやましいということではありません。小さなあごは、健康上問題が起きることが多いです。お子さんが小さい顎であるケースでは、健康上何が起きるのでしょうか。大きな影響を与えるのは、主に下記のものです。
歯並びが悪くなる
- 叢生(そうせい) / 歯が前後にガタガタしている
- 出っ歯 / 上顎の前歯が前方に突出している
- 受け口(反対咬合・下顎前突) / 下顎の前歯が前方に出ている
歯が重なり合うと、見た目の問題もありますが、歯ブラシできちんと歯を磨くことができず、虫歯や歯周病になるリスクが高いです。自覚症状(痛みや変色)が出ると、大人と同じように歯を削るなどの治療を行わないといけません。
口呼吸になってしまう
上の顎が小さいお子様は、必然的に鼻腔も通常の方と比べて小さくなりがちです。そのため、鼻で呼吸をするという行為に支障をきたし、口で呼吸を行う口呼吸を行ってしまいます。鼻のフィルターを通さず、ウィルスが直接喉に入ることにより、扁桃炎などにかかりやすくなります。
口呼吸は常に口が開いているため、口腔内の唾液が減少します。唾液には自浄作用がありますが、お口ポカンと開いていると乾燥するため、虫歯や歯周病などの細菌感染を起こしやすい口腔内の状態になってしまいます。
子供の顎の広さは大事?
その昔、木の実など硬い食べ物を食べていたので、昔の人はあごが発達し、親知らずも奥歯として正常に機能していました。ところが、近年は食品の加工技術の進化により、柔らかい食べ物が増えてきました。そのため、しっかりした顎の広さが必要なくなり、現代人のあごの発達は退化していると言えます。
あごの発達には、遺伝・食事の習慣が大きく関係してきます。ご両親のあごが少し小さい場合は、お子様も顎の面積は狭くなります。遺伝については覆しようがありませんが、食生活で噛み応えのある硬い食材を使用し、きちんと噛む習慣をつけることはとても大切です。
乳歯が生え揃ったお子様では、歯と歯の間に隙間が空いているすきっ歯位の歯並びが理想です。永久歯は乳歯より大きいため、隙間が空いている位、顎が発達している方がきれいな歯並びになります。
小さい顎を広げる方法は?
歯科医院でお子様の定期検診(フッ素塗布やクリーニング)を行う際に、歯科医師から顎を広げるようにした方が良いとおすすめされたことはありませんか。小児矯正を行っている歯医者さんでカウンセリングや検査を受けることはとても大事です。大人になってからも歯並びを良くする歯列矯正はできますが、歯と歯をきれいに並べるためにスペースが必要となる方が多いです。その場合、たいてい歯を抜く抜歯処置を行わなければなりません。
混合歯列期であるお子さんの時に歯科矯正を始めた場合、歯を抜かずにスペースを作ることが可能です。顎の成長する時期を利用し発達を促進させることができれば、あごは正常の大きさとなり、歯も抜くことなく噛み合わせも良く、きれいに並べられます。
顎を広げるために使用する装置
混合歯列期に顎を広げる装置を装着する器具が下記の通りです。
急速拡大装置
上顎に使用できる上あごにはめる固定式の装置で、顎を広くする
拡大床
取り外し式(可撤式と専門的に呼ぶ)の装置で、ネジを一日一回回すことで、歯並びも広げることができる
マウスピース矯正
プレオルソやインビザラインファーストなどの取り外しが可能なマウスピースを装着し、顎や顔の筋肉の発達を促す
頬杖・指しゃぶり・舌で前歯を押す・口呼吸などの舌癖も改善するように、お口元の周囲の筋肉も鍛えるトレーニングを行います。MFT(口腔筋機能療法)と専門的に呼びますが、それを行うことで舌・頬・唇の筋肉も鍛えられます。正しい嚥下や発音、呼吸ができ、正しい舌の位置を理解することができます。
子供の顎の大きさに関するQ&A
はい、子供の顎の発育は重要です。小さな顎は歯並びの問題や口呼吸のリスクを引き起こし、歯の健康や全体的な成長に影響を与える可能性があります。
子供の顎が小さいと、歯並びの問題(叢生や出っ歯、受け口)や口呼吸が起こりやすくなります。これにより、歯の健康リスクが高まり、虫歯や歯周病の発生が増える可能性があります。
小児矯正を行う歯医者に相談することが重要です。混合歯列期に歯科矯正を始めることで、歯を抜かずに顎を広げることが可能です。急速拡大装置や拡大床、マウスピース矯正などの装置を使用し、顎の成長を促進させます。
まとめ
お子さんの歯並びはパパやママも気になると思います。顎の小さい子供が多く歯並びや噛み合わせに問題が生じやすく、小児矯正を行うクリニックも増えています。予約制で無料のカウンセリングを行う歯科はありますので、一度お気軽にご相談されると良いでしょう。お口の状態を診断し、治療計画や費用、治療期間などを明確に提示し、豊富な症例数もあり、信頼関係の築けるドクターやスタッフのもとで矯正治療を開始されるのが望ましいでしょう。
子供の顎が小さいことの影響についての論文を2件紹介します。
1. 小さい顎に対する上顎前方牽引の効果
Wisthら(1987)の研究では、前方交叉咬合の非強制的な子供たち(5〜10歳)において、顔面マスクからの上顎前方牽引によって歯槽と基底顎の変化が調査されました。治療中に下顎前突が減少し、18人の子供たちで正のオーバージェットが確立されました。観察期間中の変化は一般的に正常な顎関係を持つコントロールグループと比較して似ており、非常に小さなリバウンド傾向を示しました。治療後のグループ間の比較では、治療前よりも少ない有意差が示され、治療が負のオーバージェットだけでなく、一般的な顔の形態にも正常化効果を持つことを示しています。【Wisth et al., 1987】
2. ヘッドギア・ハーブスト装置と下顎段階的前進
Duら(2002)の研究では、II級1部の不正咬合を持つ中国の子供たちにおいて、上顎制御の2つのモードと咬合ジャンプの2つのモードを比較しました。この研究の結果は、ヘッドギア・ハーブスト装置と下顎の段階的前進が、顎関係の改善においてより大きな効果をもたらし、垂直方向の制御と上顎大臼歯の移動において改善を示したことを示しています。これは、顎の小さな子供に対する補正治療が、顎の形態および咬合関係に正の影響を与える可能性があることを示唆しています。【Du et al., 2002】
これらの研究から、子供の顎が小さい場合、特に矯正治療による顎の成長と形態の改善が可能であり、顎の成長に正の影響を与えることがわかります。