セットバック整形とは、上顎や下顎が発達し過ぎて骨格性の出っ歯や受け口になっている方向けの、顔の輪郭を整えるために行われる美容外科手術の一つです。お口の中から手術をしますので、歯科でも行っている医院があります。
セットバックにはデメリットはないのかご説明します。
目次
セットバック整形とはどういうもの?
セットバック整形は、上顎や下顎の突出感を失くし、ゴボ口を改善するための外科手術です。
セットバック整形の手術では、左右の第1小臼歯(中心から4番目の歯)を抜歯して、抜歯した部分の骨を切り取ります。そして切り取った部分よりも前の顎骨(前歯6本分)を後ろの顎骨にぴったり合わせるように押し下げて、固定します。
小臼歯1本分の骨がなくなりますので、その分だけ骨格によるお口の突出感を改善することが出来ます。
セットバックのデメリット
セットバック手術にはいくつかデメリットがありますので、ご紹介します。
1.外科手術のリスク
セットバック手術は外科手術ですので、出血、感染、麻酔などの一般的な外科手術のリスクが存在します。
2.ダウンタイム
外科手術後には腫れや痛み等のダウンタイムがあります。セットバック整形手術後の回復には通常、数週間から数ヶ月かかる場合があります。これは、患者が仕事や日常生活に戻るのに時間を必要とすることを意味します。
腫れ
腫れは2~3日がピークですが、1週間は横ばいか少し軽減される程度です。
腫れが気になる時は水で濡らしたタオルを患部に当てて冷やして下さい。直接氷等を当てると血行が悪くなり、薬の効きも悪くなって治りが遅くなります。
腫れの具合は、
術後2~3日100% → 1週間後90% → 1ヶ月後30% → 早くて3ヶ月後0%
という具合に時間を掛けて引いていきます。
特に術後1日目(翌日)~ 2日目(翌々日)は下顎の手術では首元まで、上顎の手術では眼の
下まで腫れる可能性がありますが、これも徐々に引いて自然治癒していきます。
痛み
術後は「ずんとした重い痛み」が術後5日ほど続きます。
また、術後3~4日目ぐらいで、「縫い目」の部分に口内炎のような痛みが出てくる場合があります。この痛みは、2週間ほど続く場合があります。その場合、1週間検診等で追加のお薬をお渡しします。
*これらのお痛みは、当院でお渡しするお薬で、コントロールできることがほとんどですが、
受診のタイミング等により、追加のお薬をドラッグストア等で購入して頂くことをお願いする場合があります。
お口周りや顎先の皮膚の感覚
個人差はありますが、約1週間~3か月かけて回復していきます。
歯や歯茎の感覚
個人差はありますが、約3~6か月かけて回復してきます。
お口周りのつっぱり感や動かしにくさ
術後お口周りは硬く動かしづらくなります。これは傷口が、術後硬くなるからです。その後、約6か月かけて傷口が柔らかくなり、お口周りのつっぱり感は徐々に軽くなっていきます。
3.手術後の微調整は出来ない
セットバック手術は骨を切りますので、一度手術を行うと、口元の引っ込み具合の微調整をすることが出来ません。
4.顎が引っ込みすぎる場合がある
・小臼歯一本程度の骨がなくなるため、顎が引っ込みすぎる場合があります。
5.皮膚が一時的に余ってたるんだ状態になる
術後に一時的に顎の皮膚が余ってたるんた状態になることがあります。これは抜歯をして骨を切除しているためです。
6.ガタガタの歯並びは治らない
セットバックは顎の骨にアプローチする手術なので歯のガタガタは治りません。ガタガタを治すためには、術後に改めて矯正治療を受ける必要があります。
7.顎を引っ込める量に限界がある
顎をかなり大きく引っ込めたい場合は、セットバックではあまり突出感が改善されない場合があります。その場合は他の術式を検討する必要があります。
8.費用が高額になる
セットバック整形は保険が適用されない場合が多く、費用の問題は手術を検討する際の重要な考慮事項となります。
以上の点を考慮に入れ、手術を受ける前には医師と十分に話し合い、リスクと利益を理解することが重要です。
セットバック整形の注意事項
セットバック手術前の準備
- 手術日までに必ず、まつ毛エクステ、スカルプ等や、手足のジェルネイル、マニキュア等は全て外しておいて下さい
- 手術の際には身につけている貴金属類はすべて外して頂きます
- 手術の前後1ヶ月内外に何らかの他の手術や治療をされたい場合には、必ず何をされるのか事前にご申告下さい。
- 手術より前3ヶ月以内に中絶・流産されている方、妊娠の可能性がある方は必ず事前にご申告下さい。
手術直前の注意事項
- 絶飲絶食でご来院下さい
- 当日の服装は動きやすい恰好で靴はスニーカーなどでお越しください
- コンタクトレンズは手術中は外して頂きます
- お化粧は当日落として頂きます
- 車、バイク、自転車等の運転は当日はおやめください
- 男性の方はお髭を剃ってください
セットバック手術の前後の過ごし方や、手術当日のコンディションについての注意については、こちらのページで詳しくご説明しています。
セットバックで顔はどんなふうに変化する?
上顎セットバック
上顎の突出感によって出っ歯やゴボ口になっていた方は、骨格が引っ込むことによって、こんもりとしていた口元が平坦になります。
歯と歯が重なって生えていて歯並びがガタガタだったり、歯自体の傾きによって出っ歯になっている方は、セットバック手術だけでは歯の方向きを改善させることが出来ません。そのため、傷口が落ち着いてから歯列矯正をお受けいただくことで、出っ歯が改善します。
下顎セットバック
下顎の過成長によって受け口になっていた方は、下顎の骨格が引っ込むことで受け口が改善します。もっと大きく引っ込めたい方は、別の術式での手術が必要になり、歯科ではなく病院での手術となります。
上下顎セットバック
上下の小臼歯を抜歯して、上下の顎を後ろに下げます。口元のこんもりした感じがかなり改善されます。歯並びがガタガタの場合は、セットバック手術後に矯正治療が必要になります。
【動画】セットバック整形のリスクについて
セットバック整形のデメリットに関するQ&A
セットバック整形のデメリットには、外科手術のリスク、ダウンタイム、腫れ、痛み、感覚の変化、微調整不可などがあります。また、費用も高額になる場合があります。
腫れは手術後2~3日がピークで、1週間後には軽減します。痛みは術後5日ほど続き、口内炎のような痛みも出る場合がありますが、通常2週間ほどで治ります。
顎を大きく引っ込めたい場合、セットバック整形だけでは限界があり、他の手術方法を検討する必要があります。
まとめ
セットバック整形手術にはいくつかのデメリットがあります。
- 外科手術のリスクが存在します。出血や感染、麻酔などが一般的な外科手術と同様に起こる可能性があります。
- 手術後にはダウンタイムが発生し、数週間から数ヶ月の回復期間が必要となります。腫れや痛みもあり、術後の不快感を伴います。
- 手術後の微調整が困難であり、顎の引っ込み具合を変えることができません。
- 顎が引っ込みすぎる場合や皮膚のたるみ、ガタガタの歯並びの改善も限定的です。
- 手術費用も高額になることが多く、保険が適用されない場合があります。
これらのデメリットを考慮し、手術前には医師との十分な相談が重要です。
セットバック手術に関連するデメリットについての論文を2件紹介します。
1. マンディブラ後退手術後の顔面神経麻痺
Surpureら(2014)の研究では、マンディブラ後退手術後に顔面神経麻痺を経験した症例について報告されています。この報告では、手術後に顔面神経の全枝にわたる右側の麻痺が発生しました。この症例では、最終的に麻痺は手術後10ヶ月で完全に回復しましたが、顔面神経麻痺はマンディブラ後退手術の重大な合併症の一つとして挙げられています。【Surpure et al., 2014】
2. マンディブラ後退手術後の上気道の変化
Kitagawaraら(2008)の研究では、マンディブラ後退手術が上気道の寸法と睡眠中の呼吸機能に与える影響を調査しました。この研究では、手術直後に睡眠中の動脈血酸素飽和度が低下しましたが、手術後1ヶ月で改善されました。しかし、肥満や睡眠障害呼吸のリスクがある患者、または大きな後退量の患者は将来的に閉塞性睡眠時無呼吸症を発症する可能性があり、マンディブラ後退手術を受けた患者には慎重な術後のフォローアップが必要です。【Kitagawara et al., 2008】