インプラント

インプラントための増骨(造骨)などの手術について教えて

インプラントための増骨(造骨)などの手術について教えて

カトレア歯科・美容クリニック 歯科医師 辻 和志

骨量が少なくインプラント手術が不可能な場合は、増骨の手術をするとインプラント可能になります。それ以外にも、インプラントが難しいと診断された方が手術可能になるための、様々な方法があります。

再生誘導法(GBR法)

歯槽骨が吸収された状態で骨の高さや厚みがないと、インプラントの表面が歯ぐきから露出することがあります。。

そのような場合には、自家骨や人工骨などの骨補填剤を入れて、その上をメンブレン(人工膜)で覆い、歯槽骨の再生を誘導するGBRという方法が用いられます。

歯槽骨の組織が再生されるまでには、骨欠損部の大きさにもよりますが、大体1ヶ月から半年ほどかかります。

上顎洞底挙上術(サイナスリフト・ソケットリフト)

上顎洞とは、両頬の骨の裏側にある空洞のことで、鼻の左右に位置しており鼻腔へとつながっています。

お口の内部から見ると、上顎臼歯部の歯槽骨の上部が上顎洞(サイナス)に繋がっていて、上顎の奥歯を失うとその部分の歯槽骨が吸収されて薄くなり、上顎洞との距離が短くなってしまいます。

その場合はインプラントを埋め込むには骨が足りず、無理にインプラントを入れると上顎洞に突き抜けてしまいます。インプラントが上顎洞側に抜けて落ちてしまうという事故も起こり得ます。

そのようなリスクを避けるため、上顎洞底部の粘膜を破らないように持ち上げて、その間のスペースに自家骨や人工骨などの骨補填剤を充填して骨組織を造成させる方法を、上顎洞底挙上術といいます。

上顎洞底挙上術には、サイナスリフトとソケットリフトという2つの方法があります。

サイナスリフト

歯槽骨の吸収が大きい場合には、上顎骨の側面から穴を開け、上顎洞底部の粘膜を破らないように慎重に持ち上げてスペースを作り、そこに骨補填剤を充填して歯槽骨の調整を行います。

ソケットリフト

歯槽骨の吸収が少ない場合は、上顎の歯槽骨から穴をあけて垂直的に上顎洞底粘膜を持ち上げて、そこに骨補填剤を充填して歯槽骨を増生します。

骨がしっかり増えたのを確認して、インプラント埋入手術を行います。

骨移植

インプラントを埋入する歯槽骨の高さや幅が足りない場合は骨移植を行うことがあります。移植材として使われる骨は、自家骨(自分の骨)や人工骨などがあります。

自家骨の採取部位は口腔内では上下顎骨、インプラント体埋入部位または周辺の骨などです。口腔外では腸骨や脛骨などが一般的です。自家骨は骨造成に優れていますが、採取手術により二週間程度の入院が必要で、患者さんの心身の負担や採取量の制約という問題もあります。

人工骨としては、人体の骨や歯を構成する主成分のハイドロキシアパタイトや、リン酸三カルシウム(β-TCP)が多く用いられます。

最近では人工骨も性能の優れた製品が開発され、成功率が高まってきています。そのほか、他家骨(他人の骨、厚生労働省未承認)、移植骨(牛などの骨、厚生労働省未承認のものあり)など、海外で認可されていても日本では認可を受けていない製品もあります。

骨移植を受ける際は、必ず安全性、メリット、デメリット等についてしっかり説明を受けてください。

歯肉の移植

インプラント体の周囲の歯肉は、厚くて硬く、動きにくい歯肉の方が、歯周病の感染防止の点からも、見た目も優れています。

そのため、インプラント体周囲の歯肉が柔らかくて薄く、動きやすい場合は、口蓋などから、厚くて硬く動きにくい歯肉を採取して、インプラント体の周囲に移植する場合があります。

インプラントの適応拡大を目指して

歯を失ってから入れ歯やブリッジにされていた方は、歯を失った部分の顎骨が吸収されてしまいます。

このように、何らかの原因で歯を失って歯槽骨(顎骨)が大きく吸収されてしまった方は、インプラントを埋め込む骨が足りないということになり、手術を行うことは困難になります。

「顎の骨の幅や高さが足りないためにインプラントは無理」と診断されて、インプラント治療を諦めてしまった患者さんも少なくありません。

かつては骨が足りないケースでは、腸骨(骨盤の骨の一部)などから骨を採取して、歯槽骨に移植する手術も行われていました。しかし腸骨を移植するためには約2週間の入院が必要で、どなたにとっても治療のハードルが高く、なかなか受けたくても受けられないものでした。

現在では、インプラント体の性能が良くなり、各メーカーから太さや長さのサイズ違いのインプラント体が開発されています。骨の状態によって、インプラント体の長さや太さを変えて、適切なサイズのインプラント体を選べるようになったのです。

また歯科医療技術も目ざましく進歩し、入院を伴った移植手術ではなく日帰りでのインプラント手術も可能になっています。

骨量が少ないためにインプラント埋入が難しい方に対してどのような治療法があるのか、現在よく行われている骨造成・骨再生療法についてご説明します。

その日のうちに噛める即時荷重インプラント

インプラント治療にはかなり長期の期間がかかり、手術から上部構造を取り付けるまでに
上顎で約6ヶ月、下顎で約3ヶ月かかります。ただし、現在は骨と結合しやすいインプラント体が開発されたことで、この期間はやや短縮される傾向にあります。

更に治療期間の短縮が期待できるのが即時荷重インプラントという術式です。インプラント体埋入時(又は1週間以内)に仮歯を装着してすぐに噛めるようにするというものです。

インプラント治療を希望していても仕事などで忙しく、長い治療期間をかけられない方に
最適な治療法といえます。

ただし、即時荷重インプラントは十分な骨量があって骨が硬い方、そしてインプラント埋入時の初期固定がしっかりと確認された方にしか行うことが出来ません。

そして注意点として、インプラント体を埋入してすぐに噛めるようになるといっても、
2~3週間ほどは硬い食べ物は避けてできるだけ軟らかい物中心としたお食事をしていただくことが必要です。

ソケットプリザベーション

抜歯をすると歯槽骨の吸収が引き起こされます。

ソケットプリザベーションは抜歯した穴に人工骨(合成代用骨)などの移植材や、人工膜(コラーゲン膜など)を充填し、歯槽骨の骨量を維持する方法です。将来、インプラント埋入する部位の抜歯に適応になります。

インプラントための増骨(造骨)などの手術に関するQ&A

増骨手術とは何ですか?

増骨手術は、歯科インプラントを埋め込むための十分な骨量がない場合に行われる手術です。手術により、自家骨や人工骨などを用いて骨組織を増やし、インプラントが安定して支持できる骨量を確保します。

なぜ歯を失うと顎骨が吸収されるのですか?

歯を失うと、その部位の骨が必要とされなくなり、体の自然なプロセスである骨吸収が進行します。これにより、歯を失った部位の顎骨が次第に減少します。

GBR法とは何ですか?

GBR法(Guided Bone Regeneration)は、骨再生を誘導する手法で、自家骨や人工骨などの骨補填剤を用い、その上を人工膜で覆います。これにより、歯槽骨の再生を助けることが可能となります。

上顎洞底挙上術とは何ですか?

上顎洞底挙上術は、上顎洞(顎骨の中の空洞部分)の底部を持ち上げ、その間に骨補填剤を充填し、骨組織を増やす手術です。これにより、インプラントが安定して設置できるようになります。

骨移植とは何ですか?

骨移植は、自家骨や人工骨を別の部位から採取し、必要な部位に移植する手術です。この手法は、インプラント治療のために歯槽骨の高さや幅を増やす必要がある場合に行われます。

まとめ

インプラント

骨量が足りない為にインプラント手術が出来ない方の為の、増骨などの手術についてご説明しました。

インプラント体の改良や技術の進歩により、手術の適応範囲が拡がってきています。他院でインプラント手術が不可という診断を一度受けた方でも、他に手術が可能になる方法があるかもしれませんので、ぜひセカンドオピニオンを求めることをおすすめします。

この記事の監修者
医療法人真摯会 カトレア歯科・美容クリニック
院長 辻 和志

2008年 国立九州大学歯学部卒。医学博士。日本口腔外科学会認定医。ICLS講習修了。

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