矯正歯科

重度の不正咬合以外でインビザラインをおすすめしない場合はある?

重度の不正咬合以外でインビザラインをおすすめしない場合はある?

マウスピース矯正のインビザラインは、すべての方に適しているわけではなく、治療をおすすめできないケースも存在します。特に、重度の不正咬合だけでなく、患者さんの生活習慣や性格が治療に影響する場合があります。インビザラインをおすすめしない場合についてご説明します。

装着時間などの自己管理が難しい方

インビザライン治療では、患者さん自身が治療に積極的に取り組むことが大きな成功要因となります。マウスピース型矯正装置の特性上、以下のようなポイントで自己管理が求められますが、これが難しい方には治療の効果が期待できない場合があります。

1. 装着時間を守る必要がある

インビザラインでは、マウスピースを1日22時間以上装着することが必要です。これを怠ると歯が計画通りに移動せず、逆に後戻りを起こしたりして治療が遅延したり、失敗したりする可能性があります。

以下のような生活習慣や性格がある場合、装着時間を守ることが難しいことがあります。

  • 忙しいスケジュールで装着の習慣を維持できない
  • マウスピースを紛失しやすい
  • 自宅外での食事が多いため、取り外す機会が多く再装着を忘れがち

対策

スマートフォンのリマインダー機能や、家族・友人からのサポートを活用することで装着時間を管理しやすくする工夫が役立ちます。

 飲食後の歯磨きやマウスピースの洗浄が難しい方

インビザラインでは、食事や飲み物(特に色のつくものや糖分が含まれるもの)を摂取する際にマウスピースを外す必要があります。その後、再装着する前に歯磨きをして口腔内を清潔に保つことが求められます。

しかし、以下の状況では難しい場合があります。

  • 外食や間食が頻繁で歯磨きの時間を確保しづらい
  • 歯磨きやマウスピースの洗浄を忘れやすい
  • 清潔さへの意識が低い

リスク

口腔内に残った食べかすや歯垢が原因で、虫歯や歯周病を引き起こすリスクが高まるため、治療中でも健康な歯を維持することが困難になります。

毎日のマウスピースの洗浄や保管などの管理が出来ない方

マウスピースの管理は、歯列矯正の成功に直結します。以下の行動が求められます。

  • 使用後の毎日の洗浄(ぬるま湯や専用クリーナーを用いる)
  • 外した時はケースに入れて保管する(専用ケースを使用して紛失や破損を防ぐ)

これらの作業を怠ると、以下の問題が発生する可能性があります。

  • マウスピースの汚れや臭いの蓄積
  • 破損や紛失による追加費用の発生
  • 交換サイクルが乱れることで治療計画が崩れる

解決策

マウスピースを清潔に保つことが習慣化できない場合、家族や歯科医師と相談しながら管理をサポートする仕組みを取り入れると良いでしょう。

モチベーションが維持できない方

インビザライン治療は、装置が目立たない反面、進行状況が分かりにくいため、自己モチベーションを維持することが重要です。以下のような性格の方は、治療中に挫折する可能性があります。

  • 目に見える変化がないと意欲を失いやすい
  • コツコツと取り組むことが苦手
  • 長期的な計画よりも短期的な成果を求める

工夫

定期的に写真を撮影して治療の進捗を確認する、歯科医師からのポジティブなフィードバックを受けることでモチベーションを高めることができます。

インビザラインが適さない可能性がある例

自己管理が難しい方には、固定式の矯正装置(ワイヤー矯正、裏側矯正)の方が適している場合があります。ワイヤー矯正では患者さん自身の管理が少なく、装置を自分で外すことができないため、治療が計画通りに進みやすいです。

インビザライン治療を成功させるには、患者さん自身の自己管理能力が大きなカギを握ります。特に、日常生活の中でマウスピースの装着やケアを徹底できるかどうかがポイントです。

1. 定期的な通院が困難な方

治療中は、2ヶ月に一回程度の通院が必要です。この際、治療の進捗確認や新しいアライナーの受け取りを行います。仕事や学校、その他の理由で定期的な通院が難しい方には、インビザライン治療は適さない場合があります。

※予めすべてのアライナーを患者さんにお渡しする場合もあります。その場合も通院は必要です。

2. 重度の歯周病を患っている方

歯周病が進行している場合、炎症によって歯を支える骨や歯茎が弱くなるため、矯正治療による歯の移動が難しくなります。まずは歯周病の治療を優先し、口腔内の健康を回復させることが重要です。
歯周病の治療によって骨や歯ぐきの状態が改善した場合は、矯正治療を行える場合が多いです。

3. 顎関節症の症状がある方

顎関節症を患っている方は、マウスピースの装着によって顎関節に負担がかかり、症状が悪化する可能性があります。顎関節症の程度や原因によっては、他の矯正方法を検討する必要があります。

4. 成長期の子ども

成長期にある子どもは、顎の成長が続いているため、インビザライン治療が適さない場合があります。成長が完了してから矯正治療を検討することが望ましいです。

5. 喫煙習慣がある方

喫煙は口腔内の健康に悪影響を及ぼし、歯茎の血流を悪化させることで治療効果を減少させる可能性があります。また、マウスピースが変色する原因にもなるため、禁煙が推奨されます。

6. 虫歯や歯周病のリスクが高い方

マウスピース装着中は唾液の流れが変わり、歯垢が溜まりやすくなります。虫歯や歯周病のリスクが高い方は、治療中の口腔ケアを徹底する必要があります。

7. 複雑な歯列矯正が必要な方

インビザラインは軽度から中等度の歯列不正に適していますが、複雑な症例や大きな歯の移動が必要な場合は、他の矯正方法が適していることがあります。

例えば、抜歯矯正はインビザラインで行うとかなり長い期間がかかるため、ワイヤー矯正をお勧めする場合があります。

8. アレルギー体質の方

アライナーの素材にアレルギー反応を示す方は、口内に炎症やかゆみが生じる可能性があります。事前にアレルギーの有無を確認し、適切な対応を取ることが重要です。

9. 定期的なメンテナンスが難しい方

インビザライン治療後も、歯並びを維持するためにリテーナーの装着や定期的なメンテナンスが必要です。これらを怠ると、歯並びが少しずつ元に戻ってしまうリスクがあります。

まとめ

インビザラインには多くの利点をがありますが、すべての患者さんに適しているわけではありません。上記の要因に該当する場合は、他の矯正方法を検討することが望ましいです。治療を検討する際は、歯科医師と十分に相談し、ご自身の口腔内の状態や生活習慣に最適な治療法を選択することが大切です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 カトレア歯科・美容クリニック
院長 辻 和志

2008年 国立九州大学歯学部卒。医学博士。日本口腔外科学会認定医。ICLS講習修了。

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カトレア歯科・美容クリニック

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