矯正歯科

歯列矯正で顎関節症になるリスクはある?

歯列矯正で顎関節症になるリスクはある?

矯正治療を始めるにあたって、「顎関節症になったらどうしよう…」と不安に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?顎関節症の基本的な知識、矯正治療との関係、リスクを回避するためのポイントをご説明します。

顎関節症とは何か

歯列矯正を考えている方の中には、「矯正治療で顎関節症になるかも?」と不安に思われる方もいるかもしれませんね。
では、そもそも顎関節症とはどのようなものなのでしょうか?

顎関節症とは、顎の関節や咀嚼筋に問題が生じ、以下のような症状が現れる状態を指します。

口の開閉時に痛みや違和感を感じる

→ 食事をするときや会話をするときに顎が痛むことがあり、特に硬いものを噛む際に強く感じることが多いです。ひどい場合には、口を開けるのも苦痛になってしまうことがあります。

顎を動かすと「カクッ」や「ジャリジャリ」といった音がする

→ 口を開閉するときに関節から音が鳴ることがあります。これは、関節内の軟骨のズレや摩耗が原因で発生することが多く、「クリック音」とも呼ばれます。痛みがなくても、この音が続く場合は注意が必要です。

口を大きく開けられない、開けにくい

→ 顎関節に異常が生じると、口を開けようとしてもスムーズに動かなくなることがあります。無理に開けると強い痛みを伴うこともあり、日常生活に支障をきたすこともあります。

顎の筋肉がこわばる、疲れやすい

→ 長時間話したり、食事をすると顎の周囲の筋肉が疲れやすくなることがあります。これは、筋肉が過度に緊張し、負担がかかっているために起こります。特にストレスが多い方は、無意識に顎に力が入ることが多く、症状が悪化しやすい傾向があります。

頭痛や肩こりが起こることもある

→ 顎関節症は顎だけの問題ではなく、首や肩の筋肉にも影響を及ぼすことがあります。噛み合わせの不調が続くと、全身のバランスが崩れ、肩こりや偏頭痛を引き起こす原因となることもあります。

このように、顎関節症は「顎の痛み」だけではなく、さまざまな症状を引き起こす可能性があります。そのため、違和感を感じたら早めに対策を考えることが大切です。

顎関節症の主な原因

では、なぜ顎関節症になってしまうのでしょうか?実は、顎関節症の原因は一つではなく、さまざまな要因が絡み合って発症することが多いのです。
主な要因を以下にまとめてご説明します。

不正咬合(噛み合わせの悪さ)

→ 歯並びが乱れていたり、噛み合わせがズレていると、顎関節に余計な負担がかかります。例えば、片方の歯でばかり噛む癖があると、顎の筋肉がバランスを崩し、関節にストレスがかかるのです。特に、奥歯の高さが合っていない場合や、前歯がうまく噛み合っていない場合には、顎に負担がかかりやすくなります。

外傷(ケガや事故)

→ 顎を強く打ったり、交通事故やスポーツで衝撃を受けたりすると、顎の関節にダメージが残ることがあります。最初は軽い違和感でも、時間が経つにつれて痛みや動かしにくさが出てくることもあるため、注意が必要です。

生活習慣や癖

→ 日常的な癖が顎関節症を引き起こすこともあります。以下のような習慣がある方は、少し意識して改善すると良いでしょう。

  • 頬杖をつく・・長時間頬杖をつくと、片側の顎関節に大きな負担がかかります。
  • 片側だけで噛む・・左右バランスよく噛むことが理想ですが、片方の歯の噛み合わせが悪いと無意識に片側ばかり使うようになり、顎関節に負担がかかります。
  • うつ伏せ寝や横向き寝・・寝る姿勢が悪いと、顎に余計な圧力がかかり、関節のズレにつながることがあります。

→ こうした日常の小さな癖の積み重ねが、気づかないうちに顎関節症のリスクを高めてしまうのです。

ストレス

→ 精神的なストレスも顎関節症の原因になります。ストレスが溜まると、無意識に歯を食いしばったり、歯ぎしりをしたりすることが増えますよね?

  • 歯ぎしりや食いしばりがあると、顎の筋肉が過度に緊張し、関節にも負担がかかります。
  • 特に、寝ている間の歯ぎしりは自分で気づきにくいため、症状が悪化しやすい傾向があります。
    → こうした筋肉の緊張が続くと、顎関節が正常に動かなくなり、痛みや違和感が出てくるのです。

歯の欠損や過去の治療

→ 例えば、奥歯が1本抜けたままになっていると、噛み合わせのバランスが崩れ、他の歯や顎関節に負担がかかります。また、詰め物や被せ物の高さが合っていない場合にも、噛み合わせがズレることで顎関節症を引き起こすことがあります。

 

顎関節症は、さまざまな要因が複雑に絡み合って発症するものです。「ただの噛み合わせの問題」と軽視せず、日常の習慣やストレス管理にも目を向けてみることが大切です。

歯列矯正と顎関節症の関係

歯列矯正を考える際に、「矯正治療をすると顎関節症になるのでは?」と不安に思われる方も少なくありません。実際に、矯正治療と顎関節症の関係にはいくつかのポイントがあります。

歯列矯正が顎関節症の予防や改善につながる理由

矯正治療の主な目的は、不正咬合を改善し、適切な噛み合わせを作ることです。噛み合わせが整うことで、次のようなメリットがあります。

顎関節への負担が軽減される

→ 噛み合わせが悪いと、特定の歯や顎の筋肉に過度な負担がかかります。
→ 例えば、奥歯がしっかり噛み合っていない場合、前歯ばかりに負担がかかり、顎関節がズレる原因になります。
→ 矯正治療によって噛み合わせを均等にすることで、顎関節への負担を軽減できます。

左右のバランスが整う

→ 片側ばかりで噛む癖がある方は、顎関節の片方にだけ負担がかかってしまいます。
→ 矯正治療で噛み合わせを調整することで、左右のバランスが取れ、顎関節にかかる負荷を均等にすることができます。

筋肉の緊張が改善される

→ 不正咬合があると、顎の筋肉が無理な動きを強いられ、緊張状態が続くことがあります。
→ 矯正治療で適切な噛み合わせになると、筋肉がリラックスしやすくなり、顎関節症のリスクを軽減できるのです。

このように、適切な矯正治療を行うことで、顎関節症のリスクを下げたり、既にある症状を改善することが期待できます。

矯正治療中に一時的に顎関節症の症状が出ることもある

一方で、矯正治療の過程で一時的に顎関節に違和感を感じることがあります。これは、矯正治療によって歯が動くことで噛み合わせが変化し、それに伴い顎関節にも影響が及ぶためです。

矯正治療では歯が少しずつ動く

→ ワイヤー矯正やマウスピース矯正では、歯が少しずつ理想的な位置に動くように設計されています。
→ しかし、移動の途中では噛み合わせが一時的に不安定になることがあり、それが顎関節に影響を与えることがあります。

一時的な噛み合わせの変化が顎に負担をかける

→ 矯正中は、歯が移動するたびに噛み合わせが変わります。
→ そのため、以前とは異なる場所で噛むことになり、顎の筋肉や関節が適応しようとして負担がかかることがあります。

症状が出ても大半は一時的なもの

→ 矯正治療中に顎が「カクカクする」「開閉がしにくい」といった違和感が出ることがあります。
→ しかし、ほとんどの場合は歯の移動が進むにつれて自然に改善されるため、過度に心配する必要はありません。
→ もし症状が続く場合は、矯正歯科の先生に相談し、治療方針を微調整してもらうことが重要です。

矯正治療の種類による顎関節への影響

矯正治療にはいくつかの種類があり、それぞれ顎関節に与える影響が異なります。

ワイヤー矯正(表側・裏側)

→ ワイヤー矯正では、金属のブラケットとワイヤーを使用して歯を移動させます。
→ 噛み合わせの微調整がしやすいため、顎関節にかかる負担を考慮しながら治療を進めることが可能です。

マウスピース矯正(インビザラインなど)

→ 透明なマウスピースを使用して歯を動かす方法です。
→ 比較的ゆるやかに歯が動くため、顎関節への急激な負担がかかりにくいというメリットがあります。
→ ただし、歯を動かす過程でマウスピースのフィット感が変わり、違和感を感じることもあります。

部分矯正

→ 前歯など、一部の歯だけを動かす矯正方法です。
→ 顎全体の噛み合わせを大きく変えるわけではないため、顎関節への影響は比較的少ないといえます。

それぞれの矯正方法にはメリット・デメリットがあり、顎関節症のリスクを考慮して治療方法を選ぶことが重要です。

矯正治療を受ける前にチェックしておきたいポイント

矯正治療を始める前に、顎関節の状態をチェックし、リスクをできるだけ減らすことが大切です。以下のような点を確認しておくとよいでしょう。

現在、顎関節症の症状がないか確認する

→ すでに顎が痛い、カクカクする、開けにくいといった症状がある場合は、矯正治療前に歯科医師に相談しましょう。

矯正治療の計画をしっかり立てる

→ 治療前に顎の状態を診断し、適切な治療方法を選ぶことが重要です。

日常生活で顎関節に負担をかけないよう注意する

→ 頬杖をついたり、片側ばかりで噛んだりする癖がある場合は、矯正治療と並行して改善していくことが望ましいです。

まとめ

歯列矯正は、適切に行えば顎関節の負担を減らし、顎関節症のリスクを低減することができます。ただし、治療中に一時的な噛み合わせの変化によって顎に負担がかかることがあるため、慎重に治療を進めることが大切です。

矯正治療は、不正咬合を改善し、顎関節への負担を軽減できる可能性がある
しかし、矯正中に一時的な噛み合わせの変化が起こり、顎関節に違和感が出ることもある
症状が続く場合は、歯科医師に相談し、治療計画を見直すことが重要

不安を感じる場合は、矯正歯科の先生としっかり話し合い、ご自身に合った治療を選ぶようにしましょう。

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