骨格が原因の出っ歯や受け口の場合、歯を動かす歯列矯正だけでは満足のいく結果が得られない場合があります。その場合は外科矯正で骨格にアプローチすることできれいな横顔になります。セットバック手術についてご説明します。
目次
セットバック手術とは?
実際に当院でセットバック手術を行った19歳の患者さんの例をもとに、ご説明します。患者さんは既にワイヤー矯正で治療を受けておられましたが、口元のふくらみが改善されないことを気にされ、来院されました。横から見た場合に、上唇・下唇のふくらみが気になる。アゴのラインがくっきりしないというお悩みが主訴となります。
ワイヤー矯正だけでは口元のふくらみの改善は難しい
患者さんは他院で矯正治療を完了してから、当院へ来院されました。矯正装置が付いていて、歯並びは非常に綺麗にはなっていますが、歯ぐきが目立つ事、噛み合わせの深さ、上の前歯で下の前歯が隠れてしまうことをご本人が大変気にされていました。
口元のふくらみの原因とは?
横からのレントゲンと合わせて唇のラインを見ていきましょう。口元のラインが実際に出ているかどうか、ふくらみがあるかという点については、審美的な口元のラインの基準にするものとして、Eラインがあります。
正式名称はエステティックラインといいます。みなさんも聞いたことがあるかもしれません。このエステティックラインとは鼻先とアゴ先を結んだラインです。Eラインよりも上唇と下唇が出ているかという点が、口元が出ている出ていないという基準になり、Eラインよりも出ていない状態が審美的に良しとされています。
この患者さんの場合、上唇下唇ともにEラインから出ており、既にワイヤー矯正で治療をされましたが、お悩みは解決しませんでした。そこで疑問が浮かびます。それは、唇のふくらみの原因は、本当に歯であったかという点です。
歯に関しては、唇のライン(赤い線)に対して上の前歯の先が限定的に関わっています。しかし歯並びを治すだけで唇のライン全体がきれいになるかというと、実際に治るのは図のように太い紺の矢印の部分のみです。つまり、矯正治療をして治るのは太い紺の矢印の部分のみになるだろうということが想像できます。
この患者さんのお悩みの部分としては、上唇よりも上の、鼻との間の部分、そして下唇からアゴ先にかけてのふくらみを悩んでおられます。ここを何とかして下げたいですが、ここのふくらみを作っているのはどこかというと、歯の上の歯茎の部分、下で言えば下の歯茎の部分です。
これらの箇所が口元のラインに関係しているとみるべきだと思います。実際に歯の上の歯茎の部分、そして下の歯茎の部分が何であるかというと、骨です。何の骨かというと歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる歯を支える骨です。これらの歯槽骨が患者さんのお悩みである口元のラインに関わっていると想像できます。
頭蓋骨の模型を実際に使って説明すると、歯はこの青い部分です。歯槽骨は緑色の部分になります。黄色の部分を動かす(修正する)ことによって横顔の赤いラインを変えることができるのではということです。その手法がセットバック手術(前歯部歯槽骨骨切術)です。
セットバック手術のやり方
この患者さんの場合、上下でセットバック手術をされましたが、簡単にセットバック手術の具体的なやり方についてご説明します。
糸切り歯の後ろの4番目の歯を抜いてスペースを作ります。そのスペースを使って歯槽骨を後ろに下げる方法です。歯槽骨の動かすラインはこの赤のラインで切って動かすわけですが
ちょうどここの部分の骨がなくなって後ろに下がるというやり方です。実際に動かすのは歯と歯槽骨(緑の部分)が一気にバックすることになります。
手術前のお顔と手術後のお顔です。口元のふくらみが改善されています。アゴがないと悩んでおられましたが、アゴができています。横から見てもよくわかる変化です。
Eラインの基準で見ると、術前はEラインよりも唇が出ていますが、術後は出ていません。術後のレントゲン写真を見ればきれいなラインが出ています。
術前のレントゲン写真と術後のレントゲン写真を比較したら、唇のラインはきれいになっています。改めて見ていきますがEラインよりも唇のラインがしっかり中に入っているのが確認できます。
歯と歯茎がどう変化したのかというのがこれで見るとわかります。
星印のラインは術前と変わらないところです。そこに対してぐっと下がっているのがわかると思います。唇の下側の歯槽骨がしっかり下がっています。星印を基準にして比較すると、下がっているのがよくわかります。
それによりこの上にある鼻から唇・アゴにかけてのラインがしっかり引っ込んでいるのがわかります。
アゴ先もこのようにできます。実はアゴができたように見えるのも、この段差によってアゴができたように見えているわけです。アゴを出す手術をしたんですかと聞かれることがありますが、実はしていません。こういう形で顎が見えるようになりました。
セットバック手術は骨を切ってバックするだけのイメージがあると思います。当院のセットバック手術はそれだけではなく傾きも変えてます。
手術前の状態をご覧ください。歯と歯茎はこのような向きですが術後の状態は少し角度が立っていると思います。下も同じように立っていてとんがり感のあった口元(ぐっと前に出ている状態)がこのように改善されているのがわかると思います。
セットバック手術で工夫し歯と歯茎をぐっと立てることを上下ともすると、このような結果になります。
また傾きだけでなく高さも変えています。
術前に歯のかみ合わせが深いというお悩みを伺っていました。術後の状態の深さとかみ合わせの高さをご覧いただくと、深さが少し改善されているのがわかると思います。
こちらもセットバックの手術で上の歯茎を少し上に上げています。そして下の歯茎は少し下に下げています。それにより深すぎるかみ合わせを改善することができます。
上下セットバックの手術をすることでEラインに対してしっかりと内側に入った口元のラインを作ることができました。
【動画】セットバック手術についての解説動画
当院の特徴
セットバック手術は、美容など他院でも行っております。骨を切って下げるだけと思われがちですが、当院ではセットバック手術の際に、歯ぐきの角度を立てています。ぐっと前に出た尖りのある口元の状態を、上下の角度を変えることで、印象を変えられます。
また、お悩みの一つである噛み合わせの深さも、上の歯ぐきを少し上げ、下の歯ぐきを少し下に下げる処置を行いました。その処置で深すぎる噛み合わせを改善し、Eラインより内側に入った口元を作れました。
セットバック手術の説明に関するQ&A
はい、セットバック手術は矯正治療だけでは解決しない骨格の問題に効果があります。例えば、矯正治療を受けた後でも口元のふくらみや歯茎の目立ち、かみ合わせの深さが残ってしまう場合に、セットバック手術が必要とされることがあります。
口元のふくらみの原因は、主に歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる歯を支える骨の位置や形状に関連しています。口元のふくらみを引き起こす部分は、上の前歯の歯茎と下の前歯の歯茎の部分です。
セットバック手術では、糸切り歯の後ろの4番目の歯を抜いてスペースを作り、そのスペースを利用して歯槽骨を後ろに下げます。具体的には、歯と歯槽骨を切り離し、下方向に移動させることで口元のふくらみを改善します。
まとめ
出っ歯や受け口のみならず、ガミースマイル、かむと歯ぐきが見える、前歯の噛み合わせが深い方などのお悩みがある方は当院へご相談ください。セットバック手術により良い結果が出るか、きちんとカウンセリングを行い、患者さんに合うご提案を致します。