現代の40代は、シニアというにはまだまだ若いのですが、そろそろ歯のケアに気をつけて歯を強くするためのアプローチを行っていった方が良い年齢にさしかかっています。その理由をご説明します。
目次
40代からの口腔の変化
1. 歯茎の退縮(歯肉退縮)
加齢に伴い、歯茎が後退し、歯の根元が露出することがあります。これにより、歯根の部分が虫歯や知覚過敏にさらされやすくなります。歯茎が退縮する原因は、加齢以外にも、歯周病や過度なブラッシングによる刺激が考えられます。歯茎の健康を維持するためには、正しい方法での歯磨きや定期的な歯科クリーニングが不可欠です。
2. 唾液の分泌量の減少
40代になると、ストレスや加齢に伴う体内の変化により、唾液の分泌が減少することがあります。唾液は口腔内の自浄作用を持ち、虫歯や歯周病を防ぐ役割を果たしています。唾液量が減ると、口腔内が乾燥し、細菌が繁殖しやすくなるため、口臭や虫歯のリスクが増します。これを予防するために、水分補給や唾液腺を刺激するためにガムを噛むのが有効です。
3. エナメル質の摩耗
年齢とともに歯のエナメル質が徐々に摩耗していきます。エナメル質は歯を保護する硬い層ですが、加齢や食事による酸の影響で薄くなります。これにより、歯が脆くなり、知覚過敏や虫歯になりやすくなります。エナメル質の摩耗を防ぐためには、酸性飲料の摂取を控える、フッ素入りの歯磨き粉を使用するなどの対策が有効です。
4. 歯並びの変化
加齢によって顎骨が徐々に変化することで、歯の位置や噛み合わせが変わることがあります。特に歯の隙間が広がったり、歯が動いたりすることがあります。このような変化は、食べ物が歯と歯の間に詰まりやすくなったり、歯周病のリスクが高まる原因となります。また、顎の骨の変形が進行すると、咬合力が弱まり、顎関節症などの症状を引き起こす可能性もあります。
5. 知覚過敏の増加
エナメル質が摩耗して歯の象牙質が露出すると、温かいものや冷たいものに対して敏感になる「知覚過敏」が発生しやすくなります。40代になると、こうした知覚過敏の症状が現れることが多くなります。知覚過敏は、歯茎の退縮や歯ぎしりなどが原因となることが多いため、日々の歯磨きやブラッシング方法に気をつけることが重要です。
6. 口腔乾燥症(ドライマウス)
40代からは、特に女性においてホルモンバランスの変化により、口腔乾燥症が現れることがあります。更年期に差し掛かると、エストロゲンの減少が唾液の分泌に影響を与え、口腔内の乾燥を引き起こすことがあります。これにより、虫歯や口臭が発生しやすくなります。口腔乾燥症の対策としては、水分補給や保湿性のある口腔ケア製品の使用が推奨されます。
7. 歯の色の変化
加齢に伴い、歯の色が黄ばんだりくすんだりすることがあります。これは、歯の内側にある象牙質が徐々に厚くなり、透明感が減少することや、食生活による着色が原因です。コーヒーやワイン、喫煙などが歯の着色を悪化させるため、ホワイトニングや適切な食事管理が重要です。
これらの変化は、40代から特によく見られるようになるため、適切なケアや歯科医との定期的な相談が必要です。
40代はまだまだ若いのにどうして口腔ケアが大事なの?
40代はまだ若いとはいえ、体力の低下や身体の変化を感じるようになり始める時期です。
「これまで虫歯は一本も出来たことがない」
「子供時代に学校で歯科健診を受けたけど、歯医者には行ったことがない」
元々歯が強くて唾液の質も良く、歯磨きを特に熱心にしなくても全く虫歯にならなかったとおっしゃる方もおられます。
しかし、虫歯に強かった人こそ40代以降は歯周病に要注意です。シニアになってから急に歯のトラブルを抱え始める人は意外と多いのです。そのため、日常的に歯を強くするための施策を行っていく必要があります。
徐々に筋肉が衰え、ホルモンバランスの変化が起こり始めると、お口の中でも確実に加齢が進んでいます。仕事や子育てに多忙な40代にとっては、過労やストレスを抱えている方も多く、口腔環境の悪化には密接なつながりがあります。
40代の約半数が歯を失っている?
厚生労働省による平成28年「歯科疾患実態調査」のデータによると、44~49歳で既に1本でも自分の歯を失った人の割合は41.1%です。
40代後半になると、“すべて自分の歯”という人が約半数しかいないことになります。さらに、50代前半になると61.5%、後半になると72.8%と、歯を失う人の割合は年齢と共に増加します。
50代・60代になってから歯が悪くなって慌てないよう、40代のうちにしっかりと口腔ケアを行って歯周病予防をしておくことが、お口の健康を維持することにつながります。
中年以降も虫歯にかかる?
2016年(平成28年)の「歯科疾患実態調査」によると、20歳以上の9割以上が過去に虫歯になったことがあり、20歳以上の3割が未処置の虫歯があるというのです。
この調査結果では、45歳以上で虫歯のある人の割合は、近年になるにつれて増加傾向にあるとのことです。それは、現代では天然の歯を失うことなく保っている高齢者が増えたために、虫歯の人も増えているのではないかと考えられています。
今後は、単に天然の歯を失わないだけでなく、健康な歯を長く保つという意識を持つことが大切です。
40代以上が歯を失う一番の原因は歯周病
中高年が歯を失う最大の原因は歯周病です、25~44歳位までの間に徐々にその兆候が出てきます。
早い人で40代後半くらいから歯周病で歯を失い始めます。最初は1本だから大丈夫、2本ならまだ何とか大丈夫、と放置していると、噛む力が他の歯にかかるためにゆっくりと噛み合わせがずれていきます。噛み合わせのずれは、更に歯を失うことの原因になり、しかもそれを加速します。
大人の歯は32本で、親知らずを除くと28本あります。しっかり噛んで何でも美味しく食べるためには、18~20本の歯が必要です。
2005年の厚労省の調査によると、1人あたりの歯の本数は、40代前半で27.5本、50代前半で24.8本、60代後半で18.3本というデータがあります。
近年、歯のメンテナンスに力を入れる歯科医院が増えてきたため、本年度は60代後半の方の歯の本数は少し改善していると思われますが、歯周病が依然として中高年が歯を失う主な原因であることに変わりはありません。
歯の質を強くするためには
大人の場合は、カルシウムをせっせと摂取しても、子供ほど歯を強くする効果は望めません。そのため、フッ素を食品から摂ったり、歯に塗布したりして、歯の表面をコートして歯からカルシウムが溶け出すのを防ぎます。
また、フッ素は歯の石灰化を助ける役割もありますので、エナメル質を溶かさない、強い歯を作ることが出来ます。フッ素は緑茶、海藻、牛肉、リンゴなどの食品から摂取できるほか、フッ素配合の歯磨き剤や洗口液を利用するのも良いです。
虫歯・歯周病から歯を守るためには
虫歯や歯周病を予防するためのポイントは2つあります。ご家庭でのセルフケアと、歯科医院での定期健診(クリーニング)です。もう何度もきいて知っているよ、と思われるかもしれませんが、大事な事なので何度もお伝えしています。
1.ご家庭でのセルフケア
40代以降は、歯肉炎にかかって少しずつ歯周ポケットが深くなってくる方が多いです。そのため歯面から歯垢を除去するだけでなく、マッサージするように、ごく軽い力で歯ブラシで歯茎をブラッシングしましょう。
また、若い頃はきれいに揃っていた歯列が、親知らずや、歯を失ったり被せ物をしたせいで、僅かにデコボコが生じてきます。そのため歯ブラシの毛先を様々な角度で当てながら歯磨きを行いましょう。
歯周病予防・虫歯予防のためには、毎日2回は歯磨きを行いましょう。特に寝る前の歯磨きはデンタルフロスや歯間ブラシも使って念入りに行いましょう。
2.歯科医院での定期健診(クリーニング)
セルフケアを丁寧に行っていても、虫歯や歯周病になってしまう方がおられます。それは歯と歯の間や歯と歯茎の溝など、気づかない部分に歯垢が残っており、その中で細菌が繁殖するからです。
歯医者での定期健診を1年に2~4回程度受けていただくと、歯垢や歯石を残さずに除去出来、お口の中の細菌を減らすことが出来ます。また、虫歯や歯周病を初期の段階で見つけることが出来ますので、軽い治療で治すことが出来ます。大切な歯を守るために、ぜひ歯の定期健診をお受け下さい。
40代からの歯のケアの大切さに関するQ&A
40代は身体の変化や体力の低下を感じる時期であり、歯周病など口腔トラブルが増える可能性があります。これまで虫歯にならなかった人でも、歯周病に要注意です。
40代以上の方が歯を失う最大の原因は歯周病です。40代後半から徐々に歯周病の兆候が現れ、放置すると噛み合わせのずれや歯の喪失を引き起こす可能性があります。
40代以降は歯周ポケットが深くなる傾向があるため、歯垢の除去だけでなく、歯茎をマッサージするように歯ブラシを使用することが重要です。また、歯磨きの際に歯列のデコボコを丁寧に磨くことも必要です。
まとめ
40代の方はまだお若いのですが、シニア世代になっても健康な歯を長持ちさせられるように、歯周病予防に気を配りましょう。歯周病は歯肉炎のうちに治療すれば治りますので、
ご家庭でのセルフケアと歯医者での定期健診で十分に予防できます。