インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲に出る歯周病のような症状のことです。「インプラントは人工の歯根なのに歯周病になるの?」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか? インプラント周囲炎についてご説明します。
インプラント周囲炎とは?
インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲の組織に炎症が起こり、歯周病と同じような症状が出ることです。歯周病と同じく、初期の症状は歯茎が赤くなって腫れや出血が起こります。
進行すると炎症の範囲が歯槽骨にまで及び、歯茎から膿が出たり口臭が発生することがあります。重症化すると最後にはインプラントがグラグラになって抜け落ちてしまいます。
インプラントを長持ちさせるためには、このインプラント周囲炎を絶対に防がねばなりません。
インプラント周囲炎の進行
インプラント周囲炎がどのように進行していくのかご説明します。
インプラント周囲炎になっていない状態
インプラントが問題なく埋入された場合は、手術後一定の期間が経つと腫れや出血はなくなります。その時点では歯周ポケットも2mm程度と浅く、問題はありません。
この状態をずっと維持することが、インプラントの長もちに繋がります。
インプラント周囲粘膜炎
インプラント周囲炎になって間もない初期の症状をインプラント周囲粘膜炎といいます。
初期の段階ではインプラントの周囲の歯茎が赤く腫れて歯肉炎の状態になります。歯磨き時に出血することもあります。インプラント周囲粘膜炎の段階では、歯科医院でクリーニングを受ける等、歯周病治療の処置と正しいセルフケアで、歯茎の状態が改善します。
インプラント周囲炎
インプラント周囲粘膜炎の症状が進行していくと、炎症が歯茎だけでなく歯槽骨に達します。インプラント周囲炎の症状は重度の歯周病の症状に似ていて、歯茎の腫れ、出血が起こるだけでなく、歯茎から膿が出る、歯茎が下がって歯の象牙質が歯茎から露出するということが起こります。
更に症状が進むと、歯周ポケットが深くなって歯槽骨が溶け始め、インプラントがグラグラになり、骨がインプラントを支えきれなくなるとインプラントが抜けてしまいます。
インプラント周囲炎と歯周病の違い
インプラントには歯根膜がないので、天然歯より細菌への抵抗力がないため、炎症や骨吸収されてしまう速度が非常に速いです。インプラント周囲炎は、歯周病に比べると症状が出にくく進行が早いため、気付いた時には既に重症化していることも少なくありません。インプラント周囲炎にならないよう、早期発見・日々の予防がとても大切になってきます。
インプラント周囲炎を予防するには
インプラントを長く使い続けるためには、インプラント周囲炎の予防はとても重要です。インプラント周囲炎の予防には以下の3つのポイントがあげられます。
- 毎日の歯磨きを丁寧に正しく行う
- 喫煙・歯周病・糖尿病などのリスクファクターを減らす
- 歯科医院で定期的にメンテナンスを受ける
上記の3点のうちのどれが欠けてもインプラント周囲炎のリスクが上がります。日頃からのプラークコントロールや歯科医院でのメンテナンスを定期的に行っていただき、さらに生活習慣にも気を付けていただくことが重要です。
インプラントとは
インプラントとは、歯を失くしたところに天然歯と同じように使える人工の歯根(チタン製)を顎の骨に埋め込んで土台を作ります。その土台となるインプラントと骨がしっかり結合していることを確認できれば、その上に人工の歯を装着し噛めるようになる治療法です。
インプラントは、入れ歯のようなわずらわしさもなく、ブリッジのように周りの歯を削ることも負荷をかけることもないので、高額な治療ではありますが噛む機能を回復させる治療としては、とてもいい治療法だと思います。違和感なく自分の歯のような感覚で噛むことができるようになります。
歯周病について
歯周病は細菌によって引き起こされる感染症です。歯と歯茎の境目の溝に細菌が溜まり、ポケットができはじめてきます。そこから炎症が起こり赤くなったり腫れたりします。さらに進行するとポケットも深くなり歯を支えている骨が溶け出し、歯がグラつき始め、やがて抜け落ちてしまいます。
インプラント周囲炎に関するQ&A
インプラント周囲炎は、インプラントが歯周病と同じような症状になることを指します。放置すると重症化します。
プラークコントロールや定期的な歯科医院でのメンテナンスを行うこと、また、健康な生活習慣を維持することで予防できます。
初期段階では無症状ですが、進行すると歯茎からの出血や排膿が起こり、最終的にはインプラントが抜け落ちます。
まとめ
インプラントの治療を受けられて、とても重要なことはインプラント周囲炎に罹患しないことです。さらにインプラントの手術を受ける前の口腔内の状態が良好であることも重要となります。まずは、毎日のブラッシングがとても大切です。あとは歯科医院でのメンテナンスも重要です。
どうしても、症状が出ないとなかなか歯科医院に行かない方も多いと思いますが、症状が出なくても「予防のために」歯科医院に通うことが大切です。歯周病治療だけではなく、全身疾患にもつながりますので口腔内の環境を良くして、それを維持していくことを心がけていきましょう。