インプラント手術後の注意点と過ごし方は？

カトレア歯科・美容クリニック　歯科医師　辻 和志

インプラントの手術後の注意点や過ごし方については、麻酔が切れたあとの痛みや腫れ、出血の有無、食事、入浴などいくつか気をつけていただきたい注意事項がありますのでご説明します。

インプラントの手術後に注意すべき点

手術後に注意すべき点は主に以下のようなものです。

1. 術後の腫れや痛みに対する対処
2. 口内の清潔を保つ
3. 食事について
4.  喫煙とアルコールの摂取を避ける
5. 定期的なメンテナンス
6. 過度な運動を避ける
7. 薬の服用について

これらは一般的なガイドラインですが、患者さんの状態や手術の内容によって、特別な指示が必要な場合もあります。手術後のケアについては、担当の医師の指示に従うことが最も重要です。

1. 手術後の痛みや腫れ

インプラント手術後に頬や顎下に痛みや腫れが出ることがあります。手術後は鎮痛剤を処方しますので、痛みが出たら我慢せずに鎮痛剤を服用しましょう。次の鎮痛剤の服用までは4時間以上あける必要があります。痛み止めが効かない時は、歯科医院までご連絡ください。

抗生物質は一週間分お出しします。抗生物質を飲み忘れると細菌感染の原因になりますので、術後の痛みや腫れが少ない場合でも、必ず全部飲み切るようにしましょう。

腫れのピークは2～3日です。一週間で腫れは殆どひきます。増骨（骨造成）の処置をした方は大きく腫れる傾向がありますので、不安な方は歯科医院までご連絡ください。

また、腫れに伴って発熱する場合もありますので、その場合は安静にしていてください。

2. 口内の清潔を保つ

インプラント手術後は、口内を清潔に保つことが非常に重要です。しかし、直接歯ブラシで手術部位をブラッシングすることは避け、ソフトなブラシを使用して、周辺の歯を軽い力でやさしくブラッシングしましょう。うがいに関しては担当医の指示に従いましょう。

3. 食事について

術後の麻酔がきいている間の食事は厳禁です。お口の感覚が麻痺していますので、誤って頬の内側を強く噛んでしまい、口内炎になることがあります。麻酔がきれたらお食事は可能ですが、出来るだけやわらかいものを食べるようにして下さい。インプラントを埋入した部分では噛まないように気をつけましょう。

埋入後の傷が落ち着くまでは、熱いものや刺激の強いものは避けましょう。飲酒も血行が良くなって出血の原因になりますので、しばらく控えていただいた方が良いです。

• 最初の数日間は柔らかい食事を心がけ、手術部位に負担をかけないようにしてください。
• 熱い食べ物や飲み物は避け、また硬い、粘り気のある、または細かい食べ物（ナッツや種子など）も避けるようにしましょう。

4. 喫煙とアルコールの摂取を避ける

手術後はしばらく喫煙は控えましょう。煙草に含まれるニコチンやタール、一酸化炭素などの有害物質が血行を悪くし、免疫力も低下するため治癒を遅らせます。これらの有害物質はインプラント体が骨と結合することも妨げますので、インプラントを長持ちさせるためには禁煙をおすすめします。

• 喫煙は血流を悪化させ、治癒を遅らせる原因となります。手術後は特に喫煙を避けてください。
• アルコールも同様に回復を妨げる可能性があるため、少なくとも手術後の初期の回復期間中は避けることが勧められます。

5. 定期的なメンテナンス

手術後は定期的に歯科医師によるフォローアップが必要です。フォローアップの主な目的は、インプラントと周囲の組織の健康状態を評価し、潜在的な問題を早期に発見して対処することです。具体的には以下のような点が含まれます。

1. 初期の回復確認・・手術直後の数週間は、インプラントの初期の腫れや不快感が回復していく様子を確認します。
2. オッセオインテグレーションの確認・・オッセオインテグレーションは、インプラント体が顎の骨にしっかりと結合するプロセスです。このプロセスには数ヶ月かかり、定期的な診察によってオッセオインテグレーションの進行状況が確認されます。
3. インプラントと周囲組織の健康状態の評価・・インプラント周囲の歯茎の健康状態、インプラントの安定性、周囲の骨組織の状態などが評価されます。
4. 口腔衛生の確認と指導・・適切にセルフケアが行われているかを確認し、必要に応じてブラッシングやフロッシングの方法についての指導を行います。
5. 噛み合わせのチェック・・インプラントと天然歯が適切に噛み合っているかを確認します。噛み合わせが悪い場合、食べ物を噛むとインプラントに過度なストレスをかけ、問題を引き起こす可能性があります。
6. 定期的なクリーニングとメンテナンス・・歯科医院での定期的なクリーニングを通じて、インプラントと自然の歯の両方を清潔に保ちます。
7. 長期的なモニタリング・・年に1回以上の定期健診で、インプラントと周囲の組織の長期的な健康をモニタリングします。

フォローアップの頻度とスケジュールは、患者さんの個々の状況やリスク要因、手術の複雑さによって異なります。初期の数週間から数ヶ月は比較的頻繁にフォローアップが行われることがありますが、その後は問題がなければ年に1～2回の定期健診に移行します。しかし、患者さんのケースに応じて、より頻繁なフォローアップが必要になる場合もあります。

6. 過度な運動を避ける

手術直後の数日間は、過度な運動などの身体的活動を避けることが勧められます。運動によって血圧が上昇して出血を引き起こしたり、腫れを悪化させる可能性があります。

7. 薬の服用について

医師から処方された抗生物質やその他の薬は、指示通りに服用してください。これにより、感染のリスクを最小限に抑えることができます。

その他の注意点

手術後の出血についての注意点

手術を受けた当日は、口の中に少し出血がみられる場合もあります。気持ち悪いからと、頻繁にうがいをすることは避けて下さい。傷口は血液が固まることで感染を防いで治癒を促すのですが、うがいをすると傷口の固まってきた血餅と呼ばれるかたぶたのようなものが血液が流れてしまい、治癒を遅らせる原因になります。

手術した傷跡から出血が続くと不安になられるかもしれませんが、唾液に血が混じる時には、ガーゼや脱脂綿などを傷口に当てて20分ほど軽く噛んでください。これは圧迫止血と呼ばれるもので、軽い出血ならば大抵止まります。それでも出血が多く、止まらない時には歯科医院までご連絡ください。

手術後の入れ歯の装着についての注意点

手術後1～2週間の間は、手術部位を傷める可能性があるため、手術部位への入れ歯の装着は控えて下さい。

入れ歯をつけられないことで食事がしにくいとか、審美的に見た目が悪いということが起こります。前歯の場合は見た目が悪くなるため、出来る限り仮の歯をお入れするようにしています。

手術後の入浴の注意点

入浴して身体が温まると全身の血行が良くなり、埋入部位から出血しやすくなります。そのため手術当日はシャワーで汗や汚れを流す程度にして、軽く済ませましょう。

【動画】前歯へのインプラント埋入

インプラント手術後の注意と過ごし方に関するQ&A

まとめ

上記のようなことを守っていただくと、インプラント埋入部分の治癒やインプラント体と骨との結合が順調に進みます。インプラント手術後は安静に寝ている必要はありませんが、身体が疲れすぎないように気をつけて生活しましょう。少しでも不安なことがあった場合には、早めに歯科医院にご連絡下さい。