歯ぎしりをしていると家族から指摘された場合、歯を守るために夜間に装着するナイトガードの使用がおすすめです。ナイトガードについてご説明します。
目次
歯ぎしりの症状の緩和にはまずナイトガード
ナイトガードとは、歯ぎしりによる歯への悪影響を緩和させるための、夜間につけていただく透明なマウスピースです。ナイトガードは強化プラスチックで出来ており、歯型を取って歯科医院で製作されます。市販されているものとは違って患者さんの歯にぴったりと合ったマウスピースが出来上がり、寝る前に上顎につけて使用します。
ナイトガードの一番の役割は、歯ぎしりによって擦り減ってしまう歯の代わりになってくれるというものです。歯ぎしりの強い方の場合は、歯に大変強い力がかかっており、歯ぎしり・食いしばりの時に歯にかかる負荷は体重の3倍程度といわれています。
一般的に食事の際の噛む力は10Kg程度ですので、歯ぎしり・食いしばりでいかに大きな力がかかり、歯にダメージを与えるか想像に難くないと思います。そのため食いしばりの強い方は数ヶ月でナイトガードに穴があいてしまう程です。3~4年使い続けられる方もおられますので、個人差が大きいです。
就寝中にナイトガードをつけることで歯ぎしりが治ったり改善するわけではありませんが、歯が摩耗するのを防ぎ、顎関節の負担も軽減されます。歯ぎしりから歯や顎関節を守るためのマウスピースとお考え下さい。
ナイトガードの使用上の注意
ナイトガードは強化プラスチックで出来ており、硬いマウスピースです。強化プラスチックは熱に弱いので、熱いお湯で洗ったり煮沸消毒をすると変形してしまう恐れがありますので避けましょう。
ナイトガードを清潔に使うためには、毎朝、外した時に義歯洗浄剤を使うと細菌の繁殖を抑えることが出来ます。
当院では1年に2~4回程度の頻度で定期健診に通っていただくことをおすすめしています。ナイトガードを使っておられる患者さんは、定期健診の時にナイトガードもお持ちください。
また、ナイトガードは保険診療で作れますので、治療費がそれほど高額になることはありません。
ナイトガードで歯ぎしりしていることがご本人にも自覚できる
人から歯ぎしりをしているといわれても、ご自身は無意識で行っているため、本当に自分が歯ぎしりをしているかどうか自覚できないものです。
もちろん歯科医師には歯を見ると歯ぎしりをしていることがわかりますが、患者さんご自身は鏡で自分の歯を見ても、擦り減っているかどうかはわからないと思います。
ナイトガードを使って頂くと、眠っている間に歯を擦り合わせた部分はマウスピースに少しずつ傷がついて削れていきますので、ナイトガードを見れば歯ぎしりや食いしばりの痕跡として残っています。目で見てマウスピースの削れ具合がわかるというのが、ご自身の歯ぎしりを客観的に見ることになり、わかりやすいと思います。
しかし、ご自身が歯ぎしりをしていることを自覚したからといって、歯ぎしりがすぐに治るわけではありませんので、ストレスを軽減させるよう心がけるところから、少しずつ始めてみましょう。
歯ぎしりとは?
歯ぎしりは夜寝ている間に、無意識に頬の咬筋に力が入って、歯を擦り合わせてしまうことで起こります。主に眠りが浅い時に起こり、熟睡している時には起こりません。
歯を強く噛みしめたり、上下の歯を擦り合わせてギリギリガリガリと音を立てるという状態が長時間続くと、歯が擦り減ったり割れたり、顎関節に異常が出たりと、悪影響が起こってきます。
しかし歯ぎしりの原因については医学上は不明とされており、原因から治すということが難しいのが現状です。
歯ぎしりをするのはどうして?
歯ぎしりの原因は正確にはわかっていないのですが、いくつか考えられる原因は以下の通りです。
1.ストレスがある
歯ぎしりの原因として一番多いとみられるのがストレスです。どなたにもストレスは多かれ少なかれ存在しているものですが、ストレスが原因で歯ぎしりを行ってしまう方は、睡眠中の無意識下での歯ぎしりや食いしばりで、ストレスを解消しているのではないかと考えられています。
ストレスをなくすことは難しいですが、歯ぎしりは歯に重大なダメージを与え続けますので、なるべくストレスを発散できる、趣味などの好きなことを何か行うようにしましょう。
2.生活習慣
スポーツ選手は瞬発力を出す時に歯を食いしばります。また、仕事や勉強に集中する時に、歯を食いしばる癖がある方もおられます。他には、ストレスとも関わってきますが、深刻な悩みがあったり、負けず嫌いで常に他人と自分を比べるなどの性格によっても、歯を食いしばりやすいタイプの方がおられます。
飲酒や喫煙の習慣も歯ぎしりを引き起こす原因になる可能性があると考えられます。ニコチンなどの有害物質によって、歯ぎしりがひどくなる方がおられます。
これらの生活習慣や普段の癖で歯を食いしばりがちな方は、睡眠中に歯ぎしりを起こしている方がみられますので、起きている間は出来るだけ歯を食いしばらないよう、力を抜くように気をつけましょう。
3.歯の噛み合わせが悪い、詰め物や被せ物が合っていない
上下の歯がきちんと噛み合っていない場合にも歯ぎしりが起こりやすくなると考えられます。詰め物や被せ物の治療をしたあと、他の歯と高さが合っていないと強く当たる部分に歯ぎしりしやすくなります。
詰め物や被せ物が合っていないことが原因で起こる歯ぎしりは、その治療をした後に急に歯ぎしりが起こり始めるのが特徴です。
4.子供の歯ぎしり
子供の歯ぎしりは、乳歯から永久歯に生え変わる時の一時的な不快感が原因で起こる場合が良くあります、子供の歯ぎしりの殆どがこれに該当します。全てが永久歯に生え変わってからも歯ぎしりが続く場合は、別の原因がある可能性が高いです。
歯ぎしりを続けると歯はどうなる?
毎晩歯ぎしりを続けていると、歯が擦り減って知覚過敏を起こしたり、歯が割れてしまうこともあります。
また、顎関節痛や開口障害、口を開け閉めする際に顎関節から音がするなど、顎関節症を起こすことがあります。
お口以外にも、頭痛や肩こり、倦怠感などの症状や腕の痺れが起こる場合もあり、歯ぎしりによって起こる可能性のある悪影響は様々な症状として出てきます。
歯ぎしりをする方へのナイトガードの使用に関するQ&A
ナイトガードは歯ぎしりによる歯への悪影響を和らげるための透明なマウスピースです。歯科医院で患者の歯型に合わせて作成され、寝る前に上顎に装着して使用します。歯ぎしりの強い人には大変効果的です。
はい、ナイトガードを使用すると、睡眠中に歯を擦り合わせた痕跡がマウスピースに残ります。これにより、自分の歯ぎしりを客観的に確認することができます。
ナイトガードは強化プラスチックで作られており、熱に弱いため熱湯や煮沸消毒は避けるべきです。毎朝清潔にするために義歯洗浄剤を使用することがおすすめです。また、定期的な歯科健診を受けることでナイトガードの効果を維持できます。
まとめ
夜間の歯ぎしり・食いしばり・噛みしめから歯を守ってくれるナイトガードについてご説明しました。歯ぎしりのある方は、歯医者にご相談ください。歯ぎしりによって歯にこれ以上ダメージを与えることなく、症状を緩和できる可能性があります。