歯周病

歯周病菌のレッドコンプレックスとは?

 

歯周病菌のレッドコンプレックスとは?

カトレア歯科・美容クリニック 歯科医師 辻 和志

歯周病を引き起こす細菌には多くの種類があります。それらは毒性別にピラミッド図で分類され、最も毒性の高い歯周病菌はレッドコンプレックスという種類に分類されます。歯周病菌の分類についてご説明します。

レッドコンプレックスは病原菌の悪性度を示す

レッドコンプレックスとは?

歯周病を引き起こす細菌の悪性度は、ピラミッド図で表します。病原性の低いブルー、パープル、グリーン、イエローコンプレックスと呼ばれるものはピラミッド図の低層に存在し、中等度の病原性であるオレンジコンプレックス、そして最も病原性の高い危険なレッドコンプレックスと呼ばれる菌の集合体が、ピラミッドの頂点になります。

コンプレックスとは集合体という意味で、歯周病に対する毒性別の細菌の集合体のことをいいます。

レッドコンプレックスの代表的な歯周病菌とは?

毒素の高いレッドコンプレックスに分類される歯周病菌は、タンネレラ・フォーサイシア、トレポネーマ・デンティコーラ、ポルフィロモナス・ジンジバリスの3つの細菌です。

これらの細菌は消化酵素であるトリプシンに良く似たトリプシン様酵素と呼ばれる酵素を分泌します。つまり、レッドコンプレックスの菌がお口の中にいることで、消化酵素によって歯茎の細胞が分解されていき、歯周病が悪化していきます。

レッドコンプレックスの細菌を口内に増やさないためには?

レッドコンプレックスは酸素が少ない環境を好むという特徴があります。そのため、レッドコンプレックスを増やさないためには、歯周ポケットが深くならないように歯茎のケアをすることが重要になります。

そのためには、歯磨きをしっかり行ってお口の中の歯垢や汚れを出来るだけ除去し、数か月に一度は歯医者で定期健診(クリーニング)を受けるようにしましょう。

歯周病の進行と口内に存在している歯周病菌の種類とは?

歯周病菌の存在が研究によってやっとわかってきたことは、レッドコンプレックスの菌に感染すると歯周病が悪化すると考えられていました。しかし、その後の研究によって、菌は変化しながら成熟して毒性が強くなっていくことがわかてきました。

歯周病になってもすぐに毒性の高いレッドコンプレックスの歯周病菌がお口の中にたくさん存在するわけではなく、初期の歯周病患者さんのお口の中は、ピラミッドの低層のブルー、パープル、グリーン、イエローコンプレックスの歯周病菌が中心になっています。

その段階で歯周病治療を行い、細菌を減らすことが出来れば歯茎の炎症は改善しますが、治療が遅れて歯周病が進行するに従って、口内の細菌はピラミッドの中層に位置するオレンジコンプレックスの細菌へと変化していきます。

オレンジコンプレックスの細菌が更に成熟すると、一番毒性の強いレッドコンプレックスの歯周病菌が増えていき、それにつれて歯周病も悪化していきます。

つまり、お口の中の歯周病菌の種類がピラミッドの底辺から頂点に変わっていくにつれて、歯周病が悪化していきます。

歯周病菌のレッドコンプレックスに関するQ&A

レッドコンプレックスとは?

レッドコンプレックスとは、歯周病を引き起こす細菌の集合体のことです。ピラミッド図の頂点に位置し、最も病原性が高く、歯周病の悪化に関与しています。

レッドコンプレックスの代表的な歯周病菌とは?

レッドコンプレックスに分類される代表的な歯周病菌は、タンネレラ・フォーサイシア、トレポネーマ・デンティコーラ、ポルフィロモナス・ジンジバリスの3つの細菌です。

レッドコンプレックスの細菌を口内に増やさないためには?

レッドコンプレックスの増加を防ぐためには、歯茎のケアが重要です。歯磨きを徹底し、歯垢や汚れを除去することが必要です。また、定期的な歯医者の健診(クリーニング)も推奨されます。

まとめ

歯のイラスト

レッドコンプレックスに属する歯周病菌は歯周病の進行につれてお口の中に増え始め、毒性が強いために更に歯周病が悪化していきます。そのため、お口の中にレッドコンプレックスが多くならないように口内を清潔にすることが大切です。

レッドコンプレックスとは、歯周病に関与する重要な菌群のことを指します。以下の2つの研究がこの点に関する情報を提供しています。

1. レッドコンプレックス菌群の混合感染
Suzukiら(2013)による研究では、レッドコンプレックスとして知られるPorphyromonas gingivalis、Treponema denticola、およびTannerella forsythia(以前のBacteroides forsythus)が成人の歯周病における最も重要な病原体として認識されています。これらの細菌は通常、歯周ポケット内で一緒に見られ、協力的に歯周組織を破壊する可能性があると示唆されています。【Suzuki et al., 2013

2. レッドコンプレックス菌群の病原性ポテンシャル
Bodetら(2007)の研究では、歯周病は混合細菌感染により歯を支える組織、歯周靭帯、および歯槽骨を破壊すると記述されています。口腔内に生息する500以上の細菌種の中で、歯周病の進行した病変に強く関連する細菌複合体として「レッドコンプレックス」が挙げられています。病原性歯周病原体であるこれらの細菌は、嫌気性グラム陰性細菌であり、歯周組織の侵入や破壊を促進し、免疫破壊的ホスト反応を促進する多くの毒性因子を発現しています。【Bodet et al., 2007

これらの研究から、レッドコンプレックスは歯周病の発症と進行に重要な役割を果たす細菌群であり、これらの細菌は歯周ポケット内で協力的に作用し、組織破壊を引き起こす可能性があることが示されています。

この記事の監修者
医療法人真摯会 カトレア歯科・美容クリニック
院長 辻 和志

2008年 国立九州大学歯学部卒。医学博士。日本口腔外科学会認定医。ICLS講習修了。

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