歯茎が痛い原因がわからないと不安になります。歯茎の役割や痛い原因などを詳しくご紹介いたします。
歯茎の役割
一般的に歯ぐきと呼ばれがちな部分ですが、専門的には歯肉と呼ぶ組織です。なにか噛む度に違和感や不快感という症状がある場合、歯肉に原因があるケースが多いです。対処法の前に歯肉の機能についてご案内します。
- 口腔内に接している上皮組織
- 内側にある結合組織
歯肉はこの二層構造で成り立っており、結合組織の6割がコラーゲンで成り立ちます。上皮組織は丈夫な層を形成していますが(角化)歯とこの上皮組織の間には僅かな溝(歯肉溝)があります。細菌がその部分へ侵入すると歯周病になる可能性が高まります。白い歯と根元の間である歯頚部を支える歯肉は、主に下記のような役割があります。
- 咀嚼力による歯の破折を予防
- 口腔内にある異物や食べかすの侵入を予防
歯茎が痛い原因と対処法
歯茎に痛みがある場合、下記のいずれかの可能性があります。
歯周病
お口の中には多くの細菌が潜んでおり、歯磨きが不十分な場合に歯についた汚れが細菌の塊である歯垢に変化し、細菌の出す毒素で歯茎に炎症が起こります。歯周病は歯周組織が破壊されていく病気で、進行するとやがて歯槽骨が溶かされ、歯がグラグラになって抜けてしまいます。
歯茎の腫れは歯周病の初期症状であることが多く、早めに歯科を受診して、歯のクリーニングを中心として歯周病治療を受けましょう。
根尖性歯周炎
虫歯が原因で歯の根の周りが腫れ、炎症を起こしている状態です。 触ると激痛があることが特徴です。虫歯の治療と同時に神経を取る治療が必要で、歯根先端に膿が溜まっている場合は、腐敗した歯髄や細菌などを除去する根管治療が必要となります。根管治療を行っても炎症がおさまらない場合は、抜歯になることもあります。
ドライマウス
口腔乾燥症とも呼ばれますが、ストレスにより口腔内の唾液が減少してしまったり、粘着性のある唾液になることで、唾液の本来の作用である口腔内の自浄作用という役割が出来なくなります。唾液の作用が弱まり細菌の繁殖が起き、歯茎の腫れなどにつながります。
フードインパクション
食べ物が歯に挟まることをフードインパクション、または食片圧入と呼びます。歯並びや虫歯のせいで食べ物が詰まりやすい場所がある場合、その部分に炎症が起こりやすく、歯肉下がりや骨吸収という症状が起き、更に進行すれば歯が抜けやすくなります。矯正治療や、むし歯、噛み合わせ等原因が様々ですので治療法もそれぞれ異なります。
智歯周囲炎
親知らず(智歯)が斜めに生えたり、歯磨きが不十分だったりという理由で親知らずの周囲に起きる歯周病のような病気です。歯茎の腫れや膿を放置しておくと、食べ物を飲み込みにくくなったり、お顔の腫れも起きてしまいます。親知らずの生え方によっては抜歯が勧められます。
歯根破折
歯に僅かなヒビが入り、そこから細菌が侵入して歯根にまで感染が及ぶケースです。歯医者さんでレントゲンを撮影して初めてわかるというケースがも多いです。根管治療を行いますが、炎症がおさまらない場合は抜歯の対象になります。
口内炎
口内炎ができると、痛みや腫れを伴います。ストレスや栄養不足などが原因で起こることがあります。様々な対処法がありますが、歯科医院では塗り薬の処方やレーザー治療を行います。
抜歯後の痛み
抜歯後には傷口が痛むことがあります。抜歯後の痛みは正常な回復過程の一環ですが、感染が起こっている場合はさらに痛みが強くなります。抜歯の処置の後には歯科医院で抗生物質や痛み止めを処方しますので、歯科医師の指示に従って服用しましょう。
歯茎が痛い原因に関するQ&A
歯茎は歯肉とも呼ばれ、上皮組織と結合組織の二層構造で成り立っており、結合組織の約6割がコラーゲンから構成されています。歯と歯茎の間には微細な歯肉溝があり、細菌が侵入すると歯周病のリスクが高まります。
根尖性歯周炎は歯の神経(歯髄)の感染により、歯根の先端に炎症が起き、膿が溜まる病気です。この状態では根管治療が必要です。
フードインパクションは食べ物が歯に挟まる状態を指し、歯周組織に影響を与えます。継続的なフードインパクションは歯肉の収縮や骨吸収を引き起こし、歯が抜けてしまうことに繋がる可能性があります。治療法は状態に応じて異なります。
まとめ
歯茎に違和感があり、少しでも上記のような症状に心当たりがあれば、なるべく早めに歯科医院へ通院しましょう。お口は毎日食事で使用するため、不快感や違和感を失くすための対処をする必要があります。歯のみではなく歯茎でもお悩みがあればかかりつけの医院へ相談し、歯科医師にきちんと症状を伝えて、歯の健康や歯肉の健康を保ちましょう。
歯茎が痛い原因に関連する論文を2件紹介します。
1. ガム噛みと顎筋疲労および痛み
Christensenら(1996)の研究では、ガム噛みと顎筋の疲労や痛みとの関連について調査しました。健康な成人8名が長時間の無動作、長時間の片側でのガム噛み、そして短時間の激しい咬合(MVC)を行い、筋電図(EMG)を用いて右および左の咬筋の筋収縮活動をモニタリングしました。10分間の片側ガム噛みでは、75%の被験者が弱い顎筋疲労を経験しましたが、咬筋痛は発生しませんでした。この研究は、長時間の片側ガム噛みが顎筋の疲労を引き起こし、結果として痛みを感じる可能性があることを示唆しています。【Christensen et al., 1996】
2. 燃焼口内症候群(BMS)患者におけるガム噛みの鎮痛効果
Sekineら(2020)の研究では、燃焼口内症候群(BMS)の原因は不明ですが、BMS患者は痛みを軽減するためにしばしばガムを噛むことが知られています。この研究では、ガム噛みの鎮痛効果をより理解するために、ガム噛み後の血漿カテコラミンおよびセロトニンレベルと心理物理学的特性を評価しました。BMS患者において、ガム噛み後の視覚アナログスケール(VAS)スコアは有意に減少しました。この研究は、BMSの痛みにおいてアドレナリンが重要であり、ガム噛みの鎮痛効果は、不安軽減の可能性の効果によるものであることを示唆しています。【Sekine et al., 2020】
これらの研究結果から、歯茎の痛みはガム噛みによる顎筋の疲労や燃焼口内症候群など、さまざまな原因によって引き起こされる可能性があります。