インビザラインで歯並びの矯正治療を行う場合は、マウスピースを1日に22時間以上装着するという決まりがあります。22時間というのはほぼ1日中ということになりますので、装着時間が不足しないように気をつけなければリスクがあります。装着時間が不足した場合のリスクと対処方法についてご説明します。
目次
マウスピースの装着時間が不十分なときのリスク
インビザラインは1日22時間以上という装着時間を守れないと、治療計画通りに歯が動かないだけでなく、若干の後戻りの可能性があります。
歯が予定の位置に動かずに後戻りを起こすと、マウスピースがはまらなくなることがあります。マウスピースが完全にはまらなくなると、治療計画を再度作成し、その時点から治療終了までのマウスピースを作り直さなければなりません。
その期間は歯が動かないようにリテーナーと呼ばれる保定装置を歯に付けます。再製作したマウスピースが手元に届けば、治療の再スタートです。全体は治療期間は当初の予定よりもかなり長引くことになります。
インビザラインの装着時間の重要性
インビザラインでの治療は1日22時間以上という装着時間を守れるかどうかである程度決まります。
マウスピース矯正は歯にマウスピースをつけることで矯正力を働かせ、歯を動かして行きます。そのため、マウスピースをつけていない時間は歯は動かず、寧ろ後戻りを起こしてしまいます。
歯列が後戻りを起こす理由とは?
矯正装置で歯を動かすと、歯から歯根膜に力が伝わり、動く方向の歯根膜は縮んで、反対側は伸びた状態になります。歯根膜が元の厚さに戻る段階で、歯が動く側の骨は吸収されて溶かされ、歯根膜が伸びた側は骨が新しく作られます。
矯正治療中はこれが常に行われているため、歯の周囲の組織がとても不安定で歯が動きやすい状態になります。
矯正装置を外すと、歯根膜は引っ張られた分、元に戻ろうとする力が働くため、元の歯並びの方へと戻りやすくなります。
マウスピースの装着時間が短かった時の対処方法
マウスピースの装着時間が守れず、短くなってしまった場合には以下のような対処方法があります。
- マウスピースを交換するタイミングを調整する
- 治療計画を見直しマウスピースを再製作する
1. マウスピースを交換するタイミングを調整する
マウスピースを付ける時間が不足している場合は、次のマウスピースに交換するまでの期間を延長して歯を動かすという方法があります。
2. 治療計画を見直しマウスピースを再製作する
様々理由で治療計画通りに歯が動かなかった場合は、再度治療計画を立て直してマウスピースの再製作を行う場合があります。ただし、新しいマウスピースもまた装着時間が不足する場合は、患者さんの自己管理が出来ていないということが考えられますので、マウスピースではなく、ワイヤー矯正等の固定式の装置で矯正治療を行うことをおすすめします。
マウスピースの装着を忘れないために
マウスピース矯正インビザラインでの治療が成功するかどうかは、マウスピースの規定時間の装着がきちんと守れるかどうかが大きな要因となります。装着を忘れないためには以下のようなことが有効です。
- マウスピースを着脱する時間をある程度決めておく
- スマートフォンのアラームやリマインダーを利用する
- 外食時にマウスピースを吹くためのウエットティッシュなどを持ち歩く
- 装着時間が減ってい時はいつもより多くチューイーを噛む
1. マウスピースを着脱する時間をある程度決めておく
毎日のスケジュールの中にマウスピースを付けたり外したりする時間を予め組み込んでおくことで、付け忘れを防げる可能性があります。
2. スマートフォンのアラームやリマインダーを利用する
マウスピースをついつけ忘れるという方は、スマートフォンのアラームをセットして、アラームによって装着を促す等の工夫が必要です。
3. 外食時にマウスピースを吹くためのウエットティッシュなどを持ち歩く
外出時にマウスピースを外したまま再装着せずに家に帰るということを防ぐために、外出先で外してすぐに洗えない場合は、ウエットティッシュで拭いて再装着するようにしましょう。
4. 装着時間が不足している時はいつもより多くチューイーを噛む
装着時間が不足しがちな時は、マウスピースを装着中でも1日に何度かチューイーをしっかり噛むようにして、歯とマウスピースを密着させ、後戻りを防ぐようにしましょう。
▼インビザラインについてはこちらで詳しく解説しています。
インビザラインの装着時間が足りない時のリスクに関するQ&A
インビザラインを1日22時間装着しないと、治療計画通りに歯が動かず、歯の位置が後戻りするリスクがあります。その結果、マウスピースが合わなくなり、治療計画を再度作成し、新しいマウスピースを作り直さなければならないことがあります。
矯正装置で歯を動かすと、歯根膜に力が伝わります。矯正装置を外すと、歯根膜は引っ張られた分元に戻ろうとする力が働くため、元の歯並び方向へと戻りやすくなります。これが、歯が後戻りする主な理由です。
装着時間が短かった場合の対処方法には、マウスピースの交換タイミングを調整することや、治療計画を見直し、マウスピースを再製作することがあります。これらの方法は、歯の動きを再度調整し、治療計画に沿った進行を図るために必要です。
まとめ
インビザライン治療の成功のためには、1日22時間以上の装着というルールを守ることが重要です。装着時間が不足すると治療期間の延長や後戻りなどのリスクが生じ、場合によっては治療計画の作り直しやマウスピースの再製作が必要になることもあります。
治療の遅延を避け、理想的な結果を得るためには、日々の自己管理が不可欠です。定期的な装着時間の確認、アラームの設定、外出時の準備など、装着忘れを防ぐための工夫をして、1日22時間以上の装着を守れるようにしましょう。
インビザラインの装着時間が1日22時間に満たない場合のリスクに関して、直接的な研究結果は見つかりませんでした。しかし、関連する研究を元に、一般的なリスクを推測することが可能です。
1. Ojima et al. (2020)の研究では、インビザラインの装着時間については直接言及されていませんが、インビザラインの治療効果に影響を与える可能性のある要因について言及されています。治療の成果に影響を与える要因として、装置の着用時間や着用方法が挙げられます。【Ojima, Dan, Watanabe, Kumagai, & Nanda, 2020】
2. Seleem et al. (2021)の研究では、インビザラインを使用する患者の口腔衛生に関するデータが提供されています。この研究では、インビザラインの着用時間に直接的な言及はありませんが、インビザラインを使用する際の口腔衛生の重要性が強調されています。【Seleem, Dadjoo, Ha, Santos, Mirfarsi, Matsumura-Lem, & Lazarchik, 2021】
これらの情報をもとに、インビザラインを1日22時間未満で使用した場合の潜在的なリスクを次のように推測できます:
– 歯並びの矯正効果が低下する可能性がある。インビザラインは連続して着用することで最大の効果を発揮するため、推奨される着用時間を守らないと治療期間が延長するか、または望ましい結果が得られない可能性があります。
– 口腔衛生への影響が懸念されます。インビザラインを適切に着用しないことで、歯垢の蓄積や歯肉の問題が生じる可能性があります。
したがって、インビザラインの治療を受ける場合は、指示された着用時間を守ることが重要です。これにより、治療の効果を最大化し、口腔内の健康を維持することができます。