裏側矯正を希望しても舌が大きいなどの理由でお口の状態によってはできない可能性があります。裏側矯正は器具を歯の裏側に付けるため、舌が大きいと傷つけるリスクがあります。今日は裏側矯正と舌の関係性について詳しくご紹介いたします。
裏側矯正について
矯正治療を開始したいが見た目も重視と希望された場合、裏側矯正(舌側矯正)・マウスピース矯正が一般的に挙げられますが、表側から矯正器具が全く見えない治療は裏側矯正のみです。ブラケットという突起を歯の裏側に付け、ブラケットにワイヤーを通し、歯列に矯正力をかけます。舌のある方へ矯正器具を装着するため、舌側矯正(ぜっそくきょうせい)と呼ばれます。ただし、裏側矯正を希望されても、裏側矯正ができない方がおられます。
- 舌が通常より大きい
- 上の前歯が下の前歯を極端に覆っている
- 歯並びの乱れが重度である
舌が通常より大きい
通常の下の大きさは、歯の内側に収まるサイズです。
- 歯の上に舌が少し乗る
- 歯の上を舌が大きく覆う
このような舌の大きさの方は裏側矯正を行うと、舌に矯正装置が当たりやすくなります。食事や会話をしている時、擦れてしまい舌に炎症が起きたり、舌を噛みやすくなるというトラブルの原因になります。矯正治療期間中にそのようなトラブルを抱えた状態では不快感を感じ、矯正治療を続けるのがつらくなってしまいます。舌が通常より大きいと矯正治療に影響を及ぼすため、自覚症状がある際は、歯科医師へご相談しましょう。
上の前歯が下の前歯を極端に覆っている
上の前歯が下の前歯を極端に覆う噛み合わせが深い状態は、過蓋咬合(かががいこうごう)と専門的に呼びます。この噛み合わせの方が裏側矯正を行うと、下の前歯に上の裏側矯正の器具が当たってしまいます。そのため、矯正器具が傷ついたり、ワイヤーがずれてしまったり、矯正力が歯にかからないということも考えられます。
歯並びの乱れが重度である
歯が前後にデコボコしていても、軽度であれば特に問題はありません。ただ、歯の乱れが重度であると、裏側から歯に力を加えることが難しいケースがあります。歯が原因の不正咬合ではなく、顎や骨格が原因の不正咬合の場合、歯列矯正で治療するよりも、外科矯正を検討されるべきです。
裏側矯正は難しくても他の矯正治療はできることがある
矯正カウンセリングの際に裏側矯正が難しいと言われたならば、理由を確認しましょう。裏側矯正の治療法は、技術と豊富な症例経験が必要です。医院で裏側矯正を全く行っていないという理由でしたら、他の医院へ相談することをおすすめします。但し、患者さんの歯の状態や舌の大きさが原因で裏側矯正が難しいと言われた場合は、他の治療法でも難しいかどうか確認してください。
様々な治療法があることを知ろう
舌が通常よりも大きい場合は、マウスピース矯正やホワイトワイヤー矯正を行うことが可能ですし、過蓋咬合の場合は治療期間が長くなりますが、上顎、下顎と分けて行えば治療が可能です。歯並びの乱れが重度であり、骨格が原因である場合は、セットバック術などの骨切りを行える医院を選択されるのが良いでしょう。
セットバックについて
当院では、セットバック手術を行っています。骨切りであるセットバック手術後に歯列矯正を行った方がよい理由についてはこちらをご参照ください。
裏側矯正は舌が大きいと出来ないのかに関するQ&A
舌が通常より大きい場合、裏側矯正器具が舌に当たりやすくなります。これは、矯正器具が歯の裏側、つまり舌に近い部分に装着されるためです。舌に器具が擦れることで、食事や会話中に舌に炎症が起こりやすくなり、舌を噛んでしまうリスクも高まります。これらの不快感やトラブルは、矯正治療を継続する上での大きな障害となる可能性があります。
上の前歯が下の前歯を極端に覆う、いわゆる深い噛み合わせ(過蓋咬合)の場合、裏側矯正を行うと下の前歯が上の裏側矯正の器具に当たる可能性があります。これにより矯正器具が傷ついたり、ワイヤーがずれたりして、矯正力が適切に歯に伝わらないという問題が生じる可能性があります。
歯並びが重度に乱れている場合、裏側から適切に矯正力を歯に加えることが難しくなります。特に歯が前後に大きくデコボコしている場合、裏側矯正器具の効果的な配置が難しくなるためです。また、不正咬合が顎や骨格の問題に由来する場合は、歯列矯正だけではなく外科矯正が必要となるケースもあります。
まとめ
裏側矯正は舌が大きいとできないことがあります。矯正治療は部分矯正でも半年くらい、全顎矯正ですと約2~3年程度の動的治療の期間が必要です。舌に傷が出来たり、噛みやすくなってしまうなどのトラブルが続くと、治療を頑張ろうという気持ちになれないです。裏側矯正に興味がある方は、一度歯科医師に可能かどうか診断を受けましょう。
裏側矯正に関する研究では、舌の大きさが矯正治療に与える影響について直接的な言及が少ないものの、裏側矯正が口腔内の快適さや機能に与える影響についての研究は存在します。舌が大きい場合、特に裏側矯正装置と舌との間のスペースが限られ、舌への圧迫感や不快感が増す可能性があると考えられます。しかし、個々の患者の口腔内の状態や舌の動き、装置のデザインなどによって、裏側矯正が可能かどうかが左右されるため、一概に「舌が大きいと裏側矯正ができない」とは言えません。
例えば、Hohoff, Stamm, & Ehmer (2009)による研究では、裏側矯正装置による口腔内の不快感や舌への影響について検討されており、治療の計画段階でこれらの要因を考慮する必要があることが示されています。【参照:Hohoff, Stamm, & Ehmer, 2009】
また、Wu, McGrath, Wong, Wiechmann, & Rabie (2008)の研究では、裏側矯正装置と従来の外側矯正装置を使用した患者の痛みの経験について比較しており、裏側矯正装置の使用によって舌の痛みが増加する一方で、口唇や頬への痛みは従来の装置使用時よりも少なかったことが報告されています。【参照:Wu et al., 2008】
これらの研究からは、裏側矯正の際には舌の快適さや機能に影響を与える可能性があるものの、治療前の詳細な診断と計画、適切な装置の選択と調整によって、舌が大きい患者でも裏側矯正を実施できる場合があることが示唆されています。したがって、舌の大きさが裏側矯正の適用を完全に排除するものではなく、個々の症例に応じた慎重な判断が必要です。