入れ歯をしてから食事が美味しくないと感じるのはなぜなのかと気になる方はも多いでしょう。なぜ入れ歯は味覚へ影響を及ぼすのか、入れ歯を入れても美味しく感じる方法はないのかなどを含めて詳しくご紹介いたします。
入れ歯になると食事が美味しくないのはなぜ?
美味しい食事は体内に栄養をもたらすだけではなく、脳からドーパミンなどの幸せホルモンが放出されるため、体も心も安定します。食事をしても入れ歯装着後から美味しく感じられない理由は、味覚です。味覚は舌の上に味蕾(みらい)という部分から感じるものですが、舌の上の味蕾だけでなく食べ物の温度や湿度にも関係します。入れ歯装着で他を圧する力がかかり、感覚に影響を与え、結果として食事の味を変えることがあります。
入れ歯による咀嚼機能低下が関係している?
物理的な要因と生理的な要因に分かれます。
物理的な要因
保険適用の入れ歯は天然歯と比べて安定性に劣り、咀嚼力が低下することがあります。噛む回数が減ると食べ物を十分に細かく砕けず、深く味わうことができなかったり、食材の感触や温度が直接口腔内の神経に伝わりにくくなります。
生理的な要因
入れ歯が口腔内の環境を変えたことにより、味蕾の感度が変わる可能性があります。味蕾は舌以外に上顎や頬にも存在します。入れ歯には人工歯と床(歯肉)の部分があり、床が上顎の粘膜を覆ってしまったことで、味覚が働かず美味しくないと感じるケースがあります。
入れ歯の材料が関係している?
入れ歯の材料が原因で美味しく感じられないケースが多いです。例えば、保険適用内の入れ歯は、歯科用プラスチックであるレジンで作製されます。レジンの入れ歯は費用が安く、修理をしやすいというメリットがあります。一方で、歯科用プラスチックのレジンは下記のデメリットがあります。
吸水性がある
汚れや細菌が付着してにおいがつきやすく口臭の一因となります。
熱伝導率が低い
セラミックや金属は熱伝導率が高く食べ物の冷温を伝えられるが、プラスチックは熱を遮断する性質があり、温度が感じられず美味しさを感じられません。
入れ歯でも美味しく食べるには
自費治療で費用は掛かりますが、金属床の義歯を選択すると食事を美味しく感じられます。入れ歯の治療を検討する際には、保険適用の入れ歯か、自費治療の入れ歯か、それぞれのメリットやデメリットを確認してから入れ歯を作製しましょう。あとは、作製した入れ歯がお口の状態に合っているかということがとても大切です。
入れ歯の調整及び清掃
入れ歯の調整と清掃がとても重要です。
定期的に調整する
入れ歯は個々の口内状態に合わせて適切に調整する必要があります。噛み合わせが悪いまま放っておくと他の残存歯や顎に悪い影響を与えます。歯科医院で定期的にチェックしてもらい調整をし、最適なフィット感を維持しましょう。
口腔内のケアの重要性
口内環境を良好に保つことは、味覚の感度を保つうえで重要です。外した入れ歯とお口を食後に清掃し、外した入れ歯は清潔な場所で安全に保管するように正しい手入れをし、口内衛生を維持しましょう。
柔らかく味わい深い食材を選びスパイスやハーブを活用すると、食事の味を豊かにすることができます。また、温度や食感の異なる食材を組み合わせて調理すると味覚を刺激し、食事を楽しめます。
入れ歯をすると食事が美味しくないに関するQ&A
入れ歯をすると、口腔内の感覚が変わり、特に咀嚼力が低下することが影響します。天然歯に比べて入れ歯の安定性が低いため、食べ物が十分に細かく砕けないと味わい深く感じられないことがあります。また、入れ歯が口腔内の粘膜を覆うことで、味蕾が本来の機能を果たしにくくなり、食事が美味しくないと感じることがあります。
入れ歯が口腔内の粘膜を覆うことによって、舌や頬などにも存在する味蕾が刺激を受けにくくなるためです。これにより、味覚の感度が低下し、食べ物の味が以前と異なって感じられることがあります。また、入れ歯の材質が温度伝導を阻害することも影響しています。
保険適用の入れ歯に多く使われるレジンは吸水性があり、においがつきやすくなります。これが口臭の原因となり、食事の味にも影響を与えます。また、レジンは熱伝導率が低く、食べ物の温度を感じにくいため、食事の美味しさを十分に感じられなくなることがあります。
まとめ
入れ歯が原因で美味しくないのはなぜと問われた場合、入れ歯の材料や、入れ歯装着による圧迫感で味覚に影響を及ぼすからです。どの入れ歯でもしっかりと清掃をして汚れや細菌の付着の無い清潔な状態にしましょう。また、定期的に歯科医院へ通院し、噛み合わせが合っているかの調整や、残存歯は健康かなどの確認が大切です。
入れ歯をすると食事が美味しく感じられないことについての論文を2件紹介します。
1. グミゼリーを用いた咀嚼能率評価法における視覚判定,成分溶出および粒度解析の関係[Sugimoto et al., 2012]によると、咀嚼能力の評価として、成分の溶出計測や粉砕状況に応じたスコア化などが挙げられています。この研究では、咀嚼能率の視覚判定と、食品成分(この場合はβ-カロチン)の溶出量、さらには食塊粒子の粒度解析の間の相関関係を探っています。グミゼリーを用いた実験により、咀嚼能力が食事の味覚に影響を与える可能性を示唆しています。
2. 食生活教育領域における「食育」研究の動向[川口 & 財津, 2004]では、食に関する教育の重要性が強調されており、食の準備や摂取過程における教育が、食事の楽しみ方や味覚に対する意識を高めることが示唆されています。これは、食事の満足度や味覚に対する認識を変えることができることを意味し、入れ歯を使用することで生じる味覚の変化に対処するための教育的アプローチが有効である可能性を示唆しています。
これらの研究は、咀嚼能力や食に対する教育が食事の味覚に及ぼす影響に光を当てており、入れ歯を使用している人々が食事を美味しく感じられない可能性に関連する洞察を提供しています。