インプラント体の種類や形、材質についてご説明します。まず、インプラントは顎の骨にチタン合金でできた人工歯根を埋め込み、その上に人工の歯を取り付けるという治療です。手術には、1回で済ませる方法(1回法)と、2度に分けて手術する方法(2回法)があります。1回法では、歯根と支台が一体になったインプラントを使用します。2回法では、1回目の手術の後、インプラントが骨とくっつくのを待ってから、2回目の手術で支台を取り付けます。
目次
インプラントの種類について
インプラントには様々な種類があります。
メーカーごとの種類
ITI、ブローネマルク、プラトン、アストラテック、エンポドア、カルシテック、AQBなど20~30種類ほどが使用されています。
形状の種類
スクリュータイプ(ネジのような形)、シリンダータイプ(ネジの付いていない円筒形)、バスケットタイプ(ネジのような形で空洞がある)、ブレードタイプ(T字の板状。現在ではほとんど使用されていない。)に分けられます。
現在のインプラント体の形状の主流はスクリュータイプとシリンダータイプです。
材料の種類
純チタン、HAインプラントが主に使われています。純チタンは骨と結合します。
HAインプラントはハイドロキシアパタイトをチタン表面に結合させたもので、骨を呼び込む性質があります。
他にチタン合金、チタン・ニッケル合金などがあります。
インプラント体の材質 チタンについて
インプラント体に主に使われている材料はチタンという金属であることはご存知の方も多いと思います。どうしてチタンが使われるようになったかというと、チタンは顎の骨や歯ぐきの粘膜との親和性が高いため骨としっかり結合する性質をもっているからです。
健康な歯根が骨の中にしっかりと埋まって物を噛む力を支えているように、顎骨の中に埋まったチタン製の人工歯根も、骨としっかり結合することでかなり強い力をかけてもびくともしない頑丈な歯根を再現できるようになりました。
チタンは心臓のペースメーカーや様々な部位の関節などに使われており、医療の分野ではよく知られている安全性の高い金属です。そのためインプラントに使われだしたのも偶然ではなく、チタンの持つ特性が歯に必要とされる性質と合致したからこそ、歯科医療の分野でも広く使われるようになりました。
インプラント体の形状
インプラントと骨を結合しやすくなるように研究がすすめられ、形状がどんどん改良されました。現在のインプラントは骨とより結合しやすくなるようにチタンの表面にブラスト処理を施し、表面をざらざらした形状に仕上げています。このような改良によってインプラントは骨と頑丈に結合し、抜けにくくより安全で長持ちする治療となりました。
【動画】前歯へのインプラント治療
第三の歯
インプラントを利用した歯科治療は、乳歯、永久歯の二種類しかなかった人間の歯に、第三の歯をもたらしたとも言える画期的な治療法と言えます。
しかし、インプラントも万能ではありません。インプラント治療では歯槽骨という歯の根っこを支えている骨にチタンやハイドロキシアパタイトでできた人工歯根を埋め込み、その上に義歯を取り付けることになるのですが、歯槽膿漏などの症状が進行していると、歯槽骨が痩せてきて、インプラントを行うのに充分な厚みがのこされていないこともあります。
また元々は健康な歯槽骨を持っていても、歯が抜けてからしばらく放置してしまうと、歯槽骨の吸収が進んでしまうため、やはりインプラントを行うのに支障が出ることもあります。
このような場合に用いられる手法がGBR法と呼ばれる手術です。GBR法というのは、簡単にいえば、骨を再生する技術のことで、足りない歯槽骨を再生する方法です。
骨というのは日々生まれ変わり続けているので、足りない部分に自家骨(自分の骨)をくっつけるようにのせてやると、その部分を補うように骨が再生していくことになります。インプラントを行うのに歯槽骨が足りない場合、同時に、あるいは事前にGBR法による骨の補充を行うことで、可能になる場合があるということなのですね。
インプラント自体も進化しています
歯を失った時に、従来の治療では入れ歯かブリッジで歯を補うしかありませんでした。しかし入れ歯もブリッジも、噛む力や噛み心地という点では天然の歯には到底及ばないため、不満に思っておられる患者さんも多かったと思います。現在では自費診療の入れ歯はかなり改良されたものの、保険適用で作れる入れ歯には相変わらず不満が多いようです。
インプラントは入れ歯、ブリッジの欠点をカバーする治療法で、天然の歯とほとんど変わらない噛む力と噛み心地を実現することから第3の歯とも呼ばれています。歯としての機能の回復だけでなく、見た目も殆ど天然の歯と見分けがつきません。
様々なメーカーが研究を重ねた結果、インプラントは年々進化を続けています。メーカー独自の研究によって、より安定して使用できるように形状が改良され、小さな溝の一つ一つにもメーカーの技術者の努力が込められています。
インプラントの素材にも違いがあります。チタンという人間の身体に馴染みやすい金属を使うという基本はそのままですが、その上でメーカー独自の工夫がこらされています。そのため、1つのメーカーのインプラントだけを使っている歯科医院は稀で、歯科医師は患者さんの骨や神経の状態等を、CT撮影のデータをもとに、様々な角度から診断し、その方にぴったりのインプラントを選びます。
インプラントの種類・形状・材質に関するQ&A
インプラントの種類にはITI、ブローネマルク、プラトン、アストラテック、エンポドア、カルシテック、AQBなど20?30種類ほどがあります。
インプラントの形状にはスクリュータイプ、シリンダータイプ、バスケットタイプ、ブレードタイプの4つがあります。主流はスクリュータイプとシリンダータイプです。
インプラントの材料には純チタンとHAインプラントが主に使われています。他にもチタン合金、チタン・ニッケル合金なども存在します。また、ジルコニアで出来たインプラントが最近ではシェアが増えつつあります。
まとめ
インプラントには様々な種類や形状、材質があることをご説明しました。製造メーカーの安全で安定した品質の製品を生み出すためのたゆまぬ努力と、それらの製品を使いこなすために研鑽を積んでいる歯科医師によって、今日のインプラント治療は支えられています。今後もさらに新しいインプラント体が開発されていくことでしょう。